2021.6.4一部訂正
侠客行には玄鉄令という、持つ者の願いを叶えてくれるという不思議な物がある。
玄鉄令は表に「玄鉄の令、求め有れば必ず応ず」裏に「摩天崖、謝煙客」と書かれている。謝煙客が恩義を受けた友人に三枚与え、「手ずから渡した者には、いかに困難な頼みにも、きっと応じよう」と約束したのだった。
初めにベン梁(開封)の近くの侯監集で「玄鉄令」の争奪戦がある。
持っていた呉道通は玄鉄令の主を捜し出せず殺される。呉道通の目的は不明。
金刀塞の大塞主安奉日が一団で呉道通を殺して玄鉄令を探すが見つからない。これも目的は不明。
石清・閔柔夫婦も遅れて現場に到着し、金刀塞を追うが、玄鉄令が見つからなかったことを知り、再度現場に行く。玄鉄令を手にしようとするのは、(第三巻P175)殺されたと思われる次男石中堅を掠った者を捜してもらうため。自分たちで十余年探したが見つからなかったからだ。
主人公の狗雑種(のらいぬ)は落ちていた焼餅を食べようとしたが、その中に玄鉄令が入っていた。ただし玄鉄令の意味を知らない。
雪山派が来ていて、戻ってきた石清・閔柔夫婦と金刀塞共に玄鉄令を見つけ三者の争いになる。
玄鉄令三枚のうち二枚はすでに済み、最後の一枚がこれだったのだ。
そこへ謝煙客が登場した。
「……無恥の輩の手に落ちて、死んでみろの何なのと吹きかけられれば、誓言を守るため命まで断つ羽目になるやも知れぬ。ありがたや、さいわい難なく取り戻せたわい」
だが狗雑種の願いを聞かなければならない羽目になる。しかし、狗雑種は願いを言わないため、摩天崖に連れて行く。
摩天崖では、狗雑種は、「いなくなった母を捜しに出て、犬も戻ってこないので、探している」と言う。
謝煙客は、(母親を捜せの犬を探せのと言われたら厄介だ。…そんな難題を吹っかけられるくらいなら…)。…は略した。
こう読んでみると謝煙客は、武林の問題なら史上屈指の有能者だが、民間の問題なら人並みではないかと思える。おそらく、最初に三枚の玄鉄令を出したときは、民間の問題は考えていなかったのではないか。
玄鉄令については、これ以上の言及は見つからない。
参考 書庫−侠客行