時代は明初期に設定されているが、厳密ではない。
別な小説である清朝時代の「鹿鼎記」に「前朝の令狐冲」という言葉が出てくるので、一応、明代と限定していいかと思う。
江湖というのは、江の代表である長江と湖の代表である洞庭湖から来た言葉。官に対する民間の意味であるが、実際は裏社会に近い人物が、自分たちの世界を江湖と名乗っている。
中国では賄賂が横行で官の世界は腐り切って頼りにならない。庶民にとっては江湖の人物の方が頼りになったりする。外敵の侵入には、国軍は頼れないので、江湖の人間が立ち上がって、国土防衛に当たる。国の法は無視するが、秩序保持のために自分たちだけの法を持っている。こんなありえない設定で成り立っている話だ。
笑傲江湖の場合は外敵の侵入はないが、各地の江湖の団体が、勢力争いで鎬を削っている。その争いも実力勝負はあまりなく、裏での権謀術数の争い。
争いの要は、むかし宦官が残した武術の秘伝書「避邪剣譜」を手に入れて、江湖世界に覇を称えようとするもの。主人公の令狐冲(姓は令狐、名は冲)が手に入れた楽譜「笑傲江湖」がその秘伝書と疑われる。
その江湖の華山派の令狐冲の立場から書かれており、そちらを正派という。
対抗する勢力は邪派というが、もちろん本人たちが邪派と言っているわけではない。
少し笑傲江湖の武林(武侠の世界)の説明をする。赤字は派とその掌門(代表者)、黒字は弟子たち。
まずは正派。
五嶽剣派は総称で、その中は次のように分かれている。
☆嵩山派 左冷禅 五嶽剣派の中心、五嶽剣派を統合し、江湖の征服を企む。
丁勉 陸柏 費彬
☆華山派 岳不群 令狐冲の師匠。君子剣といわれいる。
寧中則:(岳婦人)令狐冲の母親同様の人。岳不群に負けない凄腕。
岳霊珊:岳夫妻の一人娘。小師妹と言われている、末の女弟子の意味。
令狐冲:主人公、華山派一番弟子。
労徳諾:華山派二番弟子、遅く入門したので高齢。
陸大有:六番弟子、令狐冲とは仲良し。
風清揚:すでに引退した華山派剣術流の長老。令狐冲に「独孤九剣」を教える。岳不群などは気功流。その昔気功流と剣術流の争いがあった。剣術流は駆逐されていた。
☆衡山派 莫大先生 瀟湘夜雨と言われる。武器を仕込んだ二弦琴を持っている。
劉正風:莫大先生の師弟(弟弟子)、日月神教の曲洋と親交があったために、最初に左冷禅に目をつけられ、衡山派は壊滅状態に陥る。簫の名手、ドラマでは琴の名手。
☆泰山派 天門道人 激高しやすく、それを利用されて総帥(道長)の座を奪われる。
☆恒山派 定闔t太 ドラマでは出てこない。死を迎えて令狐冲を次の師父(総帥)とする。
定静師太:定闔t太の姉弟子、弟子たちを連れて福建に向かう途中で殺される。
定逸師太:定闔t太の妹弟子、恒山白雲庵の庵主。儀琳たちの師匠。現在は尼寺だが、決まっているわけではない。ドラマでは登場したときから総帥で、定静師太のしたことも定逸師太にしている。
儀琳:心の優しい美少女、ヒロインのひとり。
☆少林派 方証大師 少林寺の方丈。達磨大師より伝わる少林寺武術の中心。
☆武当派 冲虚道人 太極拳の発生地。令狐冲には好意的。
☆青城派 余滄海 背の低い男。青城派が、福威鏢局を殲滅したことから物語が始まる。 ドラマでは変面の達人。
侯人英 洪人雄 于人豪 羅人傑 (青城四秀)
方人知
☆崑崙派 震山子 出てきたかしら?
☆福威鏢局 林震南 林平之の父親。秘伝書「避邪剣譜」の持ち主だが、自らは習得していない。福威鏢局は青城派に潰される。
林平之:華山派に入門し、仇の余滄海を討とうとする。
☆金刀王家 王元覇 洛陽にある、林平之の母親の実家。華山派が山を下りて金刀王家に頼ったとき、表面的には歓迎する。
次は邪派。
☆日月神教 東方不敗 邪教といわれる。東方不敗は全権力を楊蓮亭に預けて、一切表に出ない。
任我行:前教主、初めは行方不明、後に復活する。
任盈盈:任我行の娘、聖姑といわれて見かけは大事にされている。
曲洋:琴の名手、ドラマでは簫の名手。劉正風の親友。
黄鐘公・黒白子・禿筆翁・丹青生:江南四友といわれる。西湖の梅荘で任我行を閉じこめている。
☆五仙教 藍鳳凰 五毒教といわれる苗族の組織。藍鳳凰は聖姑の親友。どういうわけか、他の物語でも、代表はいつも若い娘(^。^))。
この物語でいつもまともなのは、この藍鳳凰と令狐冲の師娘(師匠の奥様=母親代わり)と恒山派の尼僧たち。
女性ばっかりだ。
田伯光:色魔と言われる悪党。田伯光が儀琳を暴行しようとし、令狐冲が儀琳を助けようとしたため、令狐冲に重傷を負わせる。
これも物語の発端のひとつ。
なお、最後になってみると、田伯光も良い奴と思えるほど(笑)。
桃谷六仙:桃根仙・桃幹仙・桃枝仙・桃葉仙・桃花仙・桃実仙
天真爛漫な6兄弟。智慧遅れかと思えるが、口は達者。矛盾している。武功は凄腕。令狐冲にとってありがた迷惑な人たち。桃谷六仙が令狐冲を助けようとして、逆に経絡をメチャメチャにしてしまう。そのため令狐冲は何度も危機に陥る。
あの世で予想される会話
「邪派の者よ、おまえたちも悪よのう」
「いえいえ、正派の皆さんほどでは…」