明の悪政ゆえに反乱し、強盗にならざるを得ない江湖の英雄たち。明は清の侵略にも対峙し、内憂外患状態であった。袁承志たちは、仇として明を狙いながら、明に代わり清の侵略も防ごうとする矛盾した立場にある。もちろん江湖の人たちにそれだけの力はなく、李自成の自滅もあり、清の支配となる。
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1368 明の建国。
1611 後の崇禎帝誕生。
1618 ヌルハチ、大金を建国。
1626 ホンタイジ即位、大金の二代目皇帝。
1627 各地に農民反乱が起こる。
1628 明の十七代崇禎帝即位(17歳?)。史実では、暗君とはいいきれないが、疑い深く、更に能力のある官吏が払底していて、亡国に至る。もはや亡国を防ぐことはできないほど、明は腐敗していた。
1630 袁崇煥、処刑される。
1631 李自成、農民反乱軍に加わる。
1636 ホンタイジ、国号を大金から大清にあらためる。
1643 ホンタイジ没し、フリンが六歳で即位する。第三代順治帝である。ドルゴンが摂政となる。
1644 李自成、北京を占領。明朝滅ぶ。崇禎帝は紫禁城の裏山(景山)で首つり自殺をしたといわれている。
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登場人物
袁承志 :冤罪で刑死した袁崇煥の遺児。穆人清の三番弟子となる。華山派の絶技を身につけ、侵略する満州族の清と、腐敗した明王朝に立ち向かう。華山では金蛇郎君の死体のある洞窟を見つけ、金蛇郎君の遺言を預かり、金蛇郎君の絶技も身につけ、金蛇剣の継承者となる。
孫仲寿 :袁崇煥の旧配下の結社山宗の旗頭。
朱安国・応松・倪浩・羅大千 :袁崇煥の旧配下、山宗の一員。
洪勝海 :渤海派の使い手。理由があって清の密使となる。改心して袁承志の従者となる。
夏雪宜 :金蛇郎君といわれる幻の孤高の剣客。華山の洞窟ですでに死去している。
☆ブルネイ
張朝唐:ブルネイ国高官の御曹司。唐に憧れて、郷試を受けようと、中国に来るが、見るのは飢餓の民と横暴な役人ばかりで失望する。最後にも登場し、袁承志などを南海につれていく。
張康 :張朝唐の童僕。
楊鵬挙:武会鏢(ひょう)局の鏢頭。張朝唐を助けて一緒に逃げることになる。鏢頭をやめて、張朝唐とブルネイに行く。
☆農民起義軍
李自成 :農民起義軍の首領。闖王(ちんおう)と名のって反乱を起こす。のちに明朝を滅ぼすことになるが、北京占領後、配下の乱暴狼藉を防ぐごうとせず、三日天下で終わる。
崔秋山 :李自成の部下、こどもの袁承志に伏虎掌法を教える。
李岩 :李自成の参謀役。
紅娘子 :李岩の妻、女侠。
☆華山派
穆人清 :華山派の総帥、李自成を支援している。袁承志を弟子とし、武術を伝授する。「神剣仙猿」といわれる。
聾唖の巨漢:穆人清に仕える。こどもの袁承志を華山に連れてくる。
安大娘 :李自成を支援する穆人清の仲間、こどもの袁承志を助けたりする。聾唖の巨漢は、安大娘から袁承志を預かり、華山に連れいく。
安小慧 :安大娘の娘、袁承志とはじめて会ったときはまだこども。大人になってから再会。
黄真 :華山派穆人清の一番弟子。「銅筆鉄算盤」といわれる。登場するときはいつも算盤をカチャカチャいわせて、とぼけたことを言う。(トニー谷の「あなたのお名前なんてえの」を思わせて、思わず笑ってしまう)
崔希敏 :黄真の弟子で技は平凡。崔秋山の甥。
帰辛樹 :穆人清の二番弟子。拳法の達人。「神拳無敵」といわれる。
帰二娘 :帰辛樹の妻。二人には病弱の息子がいて、妙薬を求めている。
梅剣和・劉培生・孫仲君 :帰辛樹の弟子。
☆鉄剣門
木桑道人:穆人清の友人で、鉄剣門の達人。弟弟子玉真子とは不仲。
玉真子 :木桑の弟弟子。清のホンタイジに仕えている。チベットで亡くなった師匠の鉄剣を手に入れ、木桑道人を暴行する。鉄剣門には鉄剣には逆らえない規則があった。
☆温一族(盗賊)
温青(夏青青):温儀と金蛇郎君(夏雪宜)の娘。不幸な生い立ちのためか、へそ曲がりで癇癖の強い性格。母の死後、温家を飛び出し袁承志と行動を共にする。
温儀 :温方山の娘。一族の敵である金蛇郎君を恋い慕う。武芸はできない。
温方達 :温一族の当主。武術は石リョウ派。表の顔は地方の資産家。裏は盗賊の一族。
温方義・温方山・温方施・温方悟:石リョウ派、温方達の弟。五人で石リョウ派五祖といわれる。
温正 :温方施の孫。
温南楊 :温方義の子。
☆金龍幇
焦公礼 :金龍幇の総帥。南京の顔役。昔は強盗だった。
焦苑児 :焦公礼の娘、父亡き後、金龍幇を引き継ぐ。
羅立如 :焦公礼の弟子。
☆各地の盗賊
栄彩 :龍游幇の総帥。目をつけていたお宝(つまり強盗の獲物)を、温青に横取りされ温家に乗り込んでくる。
呂七先生:浙江南部では、石リョウ派五祖と並ぶ使い手。
閔子華 :仙都派の弟子。兄の仇焦公礼を討つため、南京に来ている。
史秉光・史秉文・黎剛 :太白三英といわれる義兄弟。
鄭起雲 :海賊集団の盟主。
沙天広 :悪虎溝の塞主となる。山東盗賊団の元締め。
程青竹 :盗賊団青竹幇の総帥。
阿九 :程青竹の女弟子。明朝の公主(姫)。明朝崩壊の時、十五歳。
チョ(衣+者)紅柳 :千柳荘の荘主だが、ひとり働きの盗賊。
胡桂南 :「聖手神偸」といわれる怪盗。
孟伯飛 :蓋孟嘗とあだ名される侠客。盗賊ではない。
☆清
ホンタイジ:清第二代皇帝。
ドルゴン:ホンタイジの死後、順治帝(フリン)の摂政となる。
祖大寿 :袁崇煥に仕えた大将。今はホンタイジに仕えている。
☆明
崇禎帝 :明朝最後の皇帝。阿九の父。(在位1628−1644)
曹化淳 :崇禎帝側近の太監(宦官)。実権を握っている。
☆五毒教
何鉄手 :五毒教の女教主。雲南イ族の服装をしている。片手がなく、鉄具を着けている。後に五毒教を抜けて、華山派になり何タ守(かてきしゅ)と改名。
何紅薬 :何鉄手のおば。金蛇郎君に恋して、五毒教を裏切り重い罰を受ける。金蛇剣はもとは五毒教のものだった。
斉雲ゴウ :五毒教の教徒。