2007年10月24日

寧波 3 天一閣

 天一閣は、明の時代に寧波の豪商にして政治家で文化人の範欽(号は東明)が、私財を費やして集めた本の、図書館として建立した(1561−1566)ものである。自分でも著作し発行している。
 これは大変な文化事業である。当時の出版は硯・墨・筆から文字を書く人、彫る人、刷る人、造紙に至るまで大変な費用がかかった。王族なら国費を使えるが、そうでない人は私財を費やす。当然大勢の人が潤う。
 岡崎さんは言う。
「そう言う人が中国ではときどき現れる。金庸先生はその最後の人かも知れません。この天一閣の資料は、わたしも時々取り寄せて使わさせてもらっています」
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門には「南国書城」の文字。これは出てきたとき(帰り)に撮影したもの、雨は止んでいた。この門の中全体が天一閣博物館となっている。

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 門を入ると範欽の像。
  
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 範欽の後ろの壁には「渓山逸馬」の彫刻。大雨の中、ガイドの説明は全然聞き取れない。
「秘曲笑傲江湖」に、向問天が任我行を助けるため西湖の梅荘に行ったとき、「溪山行旅圖」を見せるシーンがある。
 北宋の画家に範(寛)中立という人がいた。その絵に「溪山行旅圖」がある。名も範であり、この範欽と関係するか。「溪山行旅圖」は見たことがないが、「渓山逸馬」のような絵かと愚考する。

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 東明草堂、範欽の書斎であろう。

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 東明草堂の前の壁、唐獅子であろうか。右の傘は説明する岡崎さん。

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 東明草堂の裏側だったか、小さな庭の壁に「漁樵耕読」の図。
 射G英雄伝で、黄蓉の内傷を治すため、郭靖と黄蓉が一灯大師の住まいに行くとき、それを邪魔する四人の一灯大師の弟子が漁樵耕読。元は大理国の大臣でした。
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 天一閣の前は、太湖石の庭。池は防火用水を兼ねている。この庭には獅子が16頭くらいいるようだ。説明では12とか、記憶がはっきりしない。左の少し大きめの白い石は女性像とか。

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 この中にも5頭くらい。

 天一閣はこの天一閣博物館の中心の建物。蔵書は当初は七万冊、それが離散し、一万三千冊にまで減ってしまった。それからは専門機関を設けて回収したり、あちこちから寄附が集まったりで、現在では三十万冊という。
 ここで貴重なのは寧波を中心とする地方史の資料である。ほとんどはここでしか見ることができない。
 和綴じの本は横に寝かせて積み上げる。本の分類や索引など蔵書の苦労もある。
 岡崎さんの解説も楽しんでいるのがありあり。聞く方も楽しくなる。
07.10.14 074.jpg ここに関係する人の肖像画(石に彫ったもの)が並んでいる部屋では、袁枚の像に、「この人は金庸さんの小説で、花魁の品評会があったとき出てきた人です」などという。「書剣恩仇録」で乾隆皇帝が江南に旅したときの話だ。このように金庸小説には実在の人物がよく出てくる。
 この人物像、年代順に並んでいるが、ある時以降はみな眼鏡をかけている。

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隣の区画に行く。

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 百鵝亭
 明の万歴年間のもの。お墓の前にあって祭るための亭を、ここに移築した。欄間に当たる所にいろいろ彫刻が施されている。それぞれの彫刻に名がある。

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 次の区画には、とぼけた虎が(^。^))。

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 次の区画へ行くトンネル

 大きな建物に古今東西の麻雀が並べられている。
 庭には、西洋人・中国人・日本人(侍姿)が麻雀している等身大の像もある。一カ所は椅子のみ。巨大な牌や骰子や点棒も。
 
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 豪華な舞台である。形は能舞台に似ている。

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 舞台の天井も華麗。
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コの字形に観客の部屋が舞台を囲む。
正面は男性のみ。女性は脇の建物の二階、この写真の二階で観劇した。

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 壁にも精巧な彫り物がある。

 天一閣の前の太湖石の庭に白い石があるが、それはここに来たある嫁の泣く姿とか。
 本を読みたくて嫁に来たのに、女は本を読ませてもらえない、触らせてもらえない。その悲しみの姿という。こじつけでしょうが、明の時代は寧波でも守旧的であったらしい。そういえば明は鎖国でしたね。
posted by たくせん(謫仙) at 07:49| Comment(9) | TrackBack(0) | 江南 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
範欽も明が鎖国していたことも知りませんでした。
明は元のあとですね。
室町幕府と貿易があったような気がしていたのですが、
記憶違いのようですね。

個人的な図書館というのは、当時は本当に大変だったのでしょうね。
今はわたしのような庶民でも、簡単に本が買えるというのは、本当にありがたいことですね。

素敵な建物と、像や、彫り物ですね。
何となく、おおらかさを感じます。

Posted by オコジョ at 2007年10月24日 19:56
範欽は地方の実力者文化人で中央の人ではありませんので、岡崎さんのような専門家でないと知らないでしょう。わたしも初めて聞く名前でした。
明は、初めのころは大航海時代に先駆けて「鄭和の大航海」をしたりしています。それで国家財政が破綻し、急に海外への興味を失い、鎖国するようになりました。特に外国に行くことは難しかったようです。
そのため密貿易が盛んになります。これが和冦ですね。和冦といってもほとんどは中国人です。
だから、初期の室町幕府とは盛んに交易がありましたね。
範欽のころは日本の戦国時代、一番制限されたころでしょう。当時は台湾に渡るのさえ御法度でした。明は台湾は国内ではないと見ています。
印刷は中国で発明されたものの、金属活字は朝鮮ので発明されたといわれているものの、発達したのは西洋。
西洋文明が入ってきて、わたしでも気軽に本を買えるようになりました。
範欽の時代は、印刷といっても、手で書き写したほうが早いというような状況だったようです。
Posted by 謫仙 at 2007年10月25日 07:02
オコジョさんお久し振りで〜す。((o(^∇^)o))わくわく

豪華な舞台の屋根の先がピンと反り返っているのが、なんとも中国的な感じがします。
タイの寺院にも共通しますね。行ったことないけど・・

中国の彫り物は精緻で見事ですね。
お土産に頂く硯や墨にもびっしり。中華街の椅子テーブルも同様。
とぼけた虎も可愛い〜それを見逃さない謫仙さんも可愛い〜〜!

明は鎖国していたの??
な〜るほど!謫仙さんの解説で納得。
室町時代の明との交易は確か習った記憶がありましたので。

Posted by みなのや at 2007年10月25日 16:10
簡単に鎖国といいましたけど、民間貿易を禁止、朝貢貿易は可、という形のようです。
陸路の方も、それに近いようです。実際には国土が広くあちこちで密貿易が行われていました。

彫り物の見事さは、どこでも目を見張りますね。専門職の給料が安かったことも理由ですが、そういうものを大金で求める豪族がいたことが一番大きな理由かな。雑技もそうですが、中国の専門職は、その裏のすさまじい訓練が想像されるものが多いですね。
Posted by 謫仙 at 2007年10月25日 17:24
じつは「範」欽じゃなくて、「范」欽ですよ。
これも簡体字の問題と思います。
Posted by こうぼくけい at 2012年08月07日 22:02
「范」でしたか、ご指摘ありがとうございます。訂正いたします。
ただ、わたしも確認したいので、訂正まで少し時間を下さい。
今急いでいますので、週末までにはなんとか…
Posted by 謫仙 at 2012年08月09日 19:49
こうぼくけい さん
范欽が正しいような感じがしましたが、範欽でも間違いとは言いきれない気がしてきました。
その経緯を上に追記しました。
いつか決定的な根拠を見つけてから訂正しようと思います。それまでこのままにしておきます。
読んだ方は始めにそこを読むので、自分で考えていただけると思います。
Posted by 謫仙 at 2012年08月13日 13:14
「範」の中国語簡体字が「范」ですが、謫仙さんは日本語で書いていらっしゃるのだから、「範」と書くのが当然です。

日本語の文章の中で、「范」欽と書いたら、一文字だけ外国語になってしまいます。簡体字は中国語であって、日本語ではないですから。
最初の指摘が変です。
Posted by 木苺 at 2012年08月29日 22:26
木苺さん
旅行中はいろいろありまして……。
なんとか無事(?)に帰れました。きのうは仕事で、これから荷物や写真などの整理をします。

この問題、指摘者が台湾の人だというので、疑問が広がりました。
繁体字の人がそう指摘したというのは、昔からそう書いていたのだろうか。それとも指摘者に錯覚があったか。
それで簡体字のできる前の資料がどうか、確認したかったわけです。
追記文は削除することにします。
Posted by たくせん at 2012年08月30日 07:07
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