2021.4.11追記
如懿伝 (2017)
日本名 如懿伝〜紫禁城に散る宿命の王妃〜
瓔珞の嫻妃(継皇后)から見た宮廷物語である。瓔珞でも書いたが、正しくは皇妃。
主人公の如懿(青桜)役は周迅。あの射G英雄伝(2003)の黄蓉だ。1974年10月18日生まれ、撮影の時は43歳か。これで少女役。
低くかすれた声(ハスキーボイスという人もいる)は今でも同じだった。
始めは乾隆帝がまだ宝親王だったときから。宝親王の妻妾選びである。そして乾隆帝となり、紫禁城の後宮に移る。
後宮内の地理は正確ではない。たとえば皇帝が養心殿から東の延禧宮に行こうとするとき、北の咸福宮の前を通る。かりに咸福宮が延禧宮への途中にあったら、咸福宮の門は左手にあるはず。ところが右手にある。左右が逆であるとか。似たようなことは他でもあった。
人名も瓔珞とはかなり異なる。こだわっても仕方ないが、つい、この人は瓔珞のあの人に相当などと思ってしまう。
元々架空の王朝物語を、乾隆帝の時代に設定し直したため、あちこちに無理があるようだ。
第26回では、葉赫那拉(エホナラ)氏が登場し、李清照の「酔花陰」を歌い舞う場面がある。南宋の詞である。有名な詞であるが、古い曲が残っていたか、後に新たに作曲されたのか気になるところ。
高晞月の慧貴妃が失脚するところまできた。事実上自分が殺した女の幽霊を見せられる。悪事が重なって露見するところだ。
(ある女に悪事をさせ、ばれたら、「あなたの家族は、私の実家で保護している。あなたの言葉によっては死に絶えるかも」と白状しないように脅す。女は自決する)
慧貴妃は実家が有力者なため、皇后に次ぐ貴妃となったのだが、みんな貴妃という位と実家の実力に畏まっているのであって、高晞月を敬ってはいない。それを自覚していない事が悲劇を招くことになった。
ついでに言うと、皇后は地位を守ることに汲々としている。かなり知恵があるが、小心者であるため、バレはしないかと侍婢に相談するほど。そして身を滅ぼすことになる。
このところ、続けて後宮物を見ている。そこでは大事な秘密の話を、大勢の宮女や宦官に聞こえるところで話す。どうやって○○をはめようとか、いじめようか、どんな毒を盛ろうとか、などという話をするのだ。お約束とはいえ、気になってしまう。おそらく秘密が漏れたら、漏らした人物を消してしまうのだろう。そしておとがめはない。そのことが知れ渡っていて、皆が口を閉ざしていると思われる。しかし、スパイ役もいるのだ。万一の時も口を閉ざしてくれる保証はない。もう少し気を遣えよ、と思うのだ。
もっとも、そう易々と人を殺すような主の噂は、女官や宦官に知れ渡っているので、仕えるのを嫌がられるのが、ブレーキになっているか。あるいは、善悪にかかわらず、主のことを話すと死ぬことになるとか。
もっとも、女官や宦官は一緒になって、大声で噂話をしている。このあたりは“お約束”なんだろうな。
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第26回では、葉赫那拉・意歓(エホナラ氏)が登場し、李清照の「酔花陰」を歌う。
第57回では、葉赫那拉・意歓は、自死する前に酔花陰を歌う。
薄霧濃雲愁永晝 薄い霧 濃い雲 永き昼を愁い
これを
薄霧(うすぎり) 濃雲(こぐも) 永き晝(え)を愁(うれ)い
としている。
問題は 晝(ひる)と畫(え)を間違えているところ。
李清照の詞の一部なので、「永き晝(え)」はおかしいと気づきそうなもの。
晝は「ひる」なのに「え」と読んだため、文字の違いに気づかなかったらしい。
揚げ足取りをしているようで気が引けるが…
格格は皇族の姫のことだが、親王の妻妾にも使う。親王の妻妾は
格格 → 庶福晋 → 側福晋 → 嫡福晋
格格や福晋は満州語。
清朝の話は、この満州語があるので気を遣う。たとえば皇帝の姓、愛新覚羅をどう読むか。わたしはアイシンギョロと読む。皇后富察はフチャと読む。これなど知らなければ読めない。
福晋や側福晋をそのまま使っている。漢語に翻訳はしない。漢語と満州語が混じることになる。
岡崎由美さんは金庸小説の翻訳で、金の趙王の完顔洪烈に「ワンヤンこうれつ」とかなを振っている。本来ワンヤンだが、完顔の字を当てた。洪烈は漢字で洪烈という名をつけた。だから読みは「こうれつ」と、使い分けている。
テムジンのちのジンギスカンは、原文は鉄木真と思われるが、カタカナ表記にしている。
音が先か文字が先か。作家の「田 郁」は「かおる」と読む。「かおる」と読むからと薫などと書いてはいけない。菊池寛は「きくちひろし」だがカンと読まれても問題にしなかった。しかし菊地と書かれたらカンカンに怒ったという。
もっとも将来はどうなるのだろう。王という人がいるが「おうさん」と呼ぶべきか「ワンさん」とよぶべきか。わたしはかながあればかなに沿って、かながなければ普通の日本語読みにしている。身近な人なら本人に訊くだろうな。