2019年08月04日

大玉児伝奇

大玉児伝奇 邦題/皇后の記

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 大清建国の物語である。そして中心となるのは摂政王ドルゴンである。
 ドルゴンは初代ヌルハチの息子であった。
 ドルゴンは恋人玉児との仲を裂かれ、玉児はホンタイジに嫁す。ホンタイジの死後、ドルゴンは、ホンタイジと玉児の息子フリンの後見として、一生を玉児のために捧げてしまう。それでも晩年(三十代後半)は暴君に近い。
 仲を裂かれたとき、ドルゴン数え十四歳、玉児は数え十三歳。現実感が薄い。その前に数え十四歳のドルゴンが、現代なら小学生か中学生かという歳で、戦場で兄を助けて大活躍。否定できる材料は持っていないが、これも伝奇かな。

 ヌルハチ、ホンタイジ、ドルゴンと優れた人材がいたが、多くの人は他民族統治の意味が理解出来ない。ドルゴンの兄弟たちは、草原でトップを争った意識を、北京まで持ってきていて、隙あらばクーデターを起こしてドルゴンを皇帝にしようとする。そうしてあちこちでドルゴンの足を引っ張る。
 また、本来なら皇太子ような位置にいるはずのホーゲさえ、漢土への進出を、盗賊が荒らしに来た程度にしか考えていない。民家に優れた物があれば、当然のごとく没収する。そのために漢土を征服したと思っている。
 いくら玉児やドルゴンたちが、国家経営の構想を描いても、実力者が国家家経営の意味を理解出来ず、略奪を繰り返す。それが自分の権利だと思っているのだ。それが統治の足を引っ張る。
 そんななかで、なんとか建国し、ドルゴンは死に、三代皇帝フリンに引き継ぐ。全50回のドラマで、ここまで46回。
 それから康煕帝の成長までが、玉児(孝荘文皇后)の出番なのだが、皇帝フリンの成長まで3回。最後の1回はフリンの出家と康煕帝即位で終わる。
 ちょっと物足りない。

 ところで玉児の名だが、どうもしっくりしない。漢語で玉児の読みがyùér (ユアル)なのだ。名はブムブタイ(布木布泰)。玉児の名はどこから?
 ヌルハチ(努爾哈赤)、ホンタイジ(皇太極)、フリン(福臨)、ドルゴン(多爾袞)など、みな清建国前の満州語なのだ。
 玉児の名に限らず、多くのことが、史実から外れているように思える。創作部分が多いと思える。
 フリンの董鄂妃は江南地方育ちである。弟の嫁を奪った。そのため弟は自殺してしまう。この辺りは、きれい事で済ますことはしていない。
 前に紹介した 多情江山 とはあまりに違いすぎる。
 多情江山よりはかなり史実に近そうだ。そうはいっても、これは大玉児伝奇の題の通り、伝奇として見るべきだろう。

 玉児役の俳優「景甜」は、中国一の美人だという。個人的な感想だが、あまりに顎が細く、人形のようだ。
 かなり前、数代先の人相として、柔らかいものばかり食べているので、顎の発達がなく、細くなるというSF的な予想があった。その見本の顔がすでに実現していた。
 また玉児をはじめ一部の女性たちの顔は、白塗りで血色が全く無く、不気味である。そんな化粧が当時の化粧法だったのだろうか。あるいは撮影当時のはやりの化粧法だったのか。白塗りは全編ではなく、一部分では少し血色があるにしても。
 
   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

孝荘文皇后
年号と西暦では一ヶ月以上のずれがあるので、差が生じることがある。年齢は数え年てある。
1613年     出生
1625年13歳 ホンタイジの側室となる。
1638年26歳 フリン(順治帝)を出産
1643年31歳 ホンタイジ死去
          順治帝即位6歳 ドルゴン摂政
1650年38歳 ドルゴン39歳死去
1651年    順治帝13歳 親政
1656年     順治帝18歳 最愛の満州族の董鄂氏入宮。
         董鄂氏はドラマでは漢族 江南の人
1660年    董鄂氏第四皇子出産、第四皇子と董鄂氏死去
1661年49歳 順治帝24歳死去
 (ドラマでは第四皇子出産、続いて第四皇子と董鄂氏死去、順治帝出家)
         康煕帝即位
1688年75歳 死去
posted by たくせん(謫仙) at 11:53| Comment(4) | 武侠世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
正史にはなく民間伝承のなかに大玉兒と呼ばれたという間違った記載があったのを、過去のドラマなどが広めてしまったようです。
本来の名前はジェルジェル(哲哲)というようです。

>あまりに顎が細く、人形のようだ。
実は今中国では急速に整形する人が増えています。美容整形の広告が街中にあふれているそうです。
特に女性は顎を細く削る整形が人気だそうで、若手の女優にも顎がやたらと細い人が増えていて、見分けがつかないとネットで揶揄されています。
范冰冰や景甜は顎を削ったわけではないですが、あのような細い顎にする人は中国でどんどん増えそうです。
Posted by 八雲慶次郎 at 2019年08月05日 21:15
民間伝承が広まって…、そういうことなんでしょうね。日本でも真田幸村や西郷隆盛のように、間違った名前で通っている人もいますので、可能性はあるのですが、「誰でも間違いに気がつきそうなもの」なので、不思議でした。だから、外国を知らない民による民間伝承ですね。
范冰冰は還珠格格の金鎖のときに、顎が細いなあと思っていました。大人になってもそのままですね。景甜は初めて見ました。
それにしても整形してまで、細くするのが、好みなのでしょうか。
わたしには劉亦菲ような普通の顎の方が美人に思えます。
NHKの鈴木アナウンサー(^_^)など。

ジェルジェル(哲哲)は、ホンタイジの皇后だった、玉児のおばさんではなかったかしら?
機会があったら確認してみます。
Posted by 謫仙 at 2019年08月06日 10:03
間違えましたブムブタイ(布木布泰)のほうでした。
ブムブタイだと、たしかにヒロインの名前としては響きが良くない感じがしますね。それも別の呼び方が広まった所以かもしれません。
Posted by 八雲慶次郎 at 2019年08月06日 19:28
やはり叔母さんのほうでしたか。
ブムブタイは中国語でも響きがよくないのかな。
他でもあることですが、
原語を漢字化することによって、音が誤って伝わったとか、
後にそのように名を変えた(呼ばれた)のが、遡って適用されたとか、
というようなことを考えていました。

昨日は、西洋美術館にモネの幻の睡蓮の絵を見に行ってきました。
2時過ぎに入ったのですが、広いので見終わらず、閉館時間になってしまいました。
睡蓮は近くで見ると何の絵か判らない(笑)のですが、離れてみると確かに睡蓮ですね。
Posted by 謫仙 at 2019年08月07日 08:06
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