2019年07月28日

木府風雲

木府風雲
   絢爛たる一族 〜華と乱〜

 面白いドラマだった。武侠ではないがこちらにする。2012年作。
 武侠ではないとは、たとえば定番の空中浮揚が出てこないなど。

 世界遺産となった雲南の麗江を舞台にした物語である。木府はその地の支配者の住む、そして政治の中心となる所だ。現在そこに木府が再建され、わたしは旅行で行ったことがある。
 金庸小説では「沐府」の名で出てくる。

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 わたしは初め風伝(ふうでん)と読んでしまった。(^_^)
 安倍首相が、云々(うんぬん)を「でんでん」と読んだのを嗤えません。

 時代は明代末期。
 主人公の阿勒邱(あろくきゅう)は、滅ぼされた一族の復讐のため、叔父と言う西和によって、幼いとき木府に送り込まれ、侍女として住み着く。西和の目的は木府を滅ぼすことだが、しかし、阿勒邱は善良で賢く、木府を滅ぼそうとは思っていない。西和の陰謀に巻き込まれただけだ。
 少し猫背のせいか、常に頭を低くして畏まっているイメージだ。歩くときも前屈み。そして権力者に囲まれて、怯えたように緊張している。この微妙な表情がうまい。もちろん緊張が解けた時は表情が違う。
 大勢のエキストラは、地元の人たちのいつもの生活をそのまま利用しているようで、(四方街の)ダンスのシーンなど、麗江のいつものシーンそのままだ。服装は今も着ている民族衣装だ。そのままではなく昔風に変えていると思うが。
 そして麗江は水の都。至る所にきれいな水が流れていて、そのまま上水として使えるほど。わたしは食器を洗っているのを見たことがある。撮影された橋や建物など、わたしも見たことのある場所が多い。
 清潔感のある、美しい石畳の町並みと玉龍雪山などの景色。
 山に囲まれているため、通る道は限られているので、城壁のいらない城市、それでも城門はある。
 洪武帝に木氏が土司に任じられて以来、木府も少しづつ充実してきたが、このドラマの時代の明朝末期の建物は、再建された今の建物とはかなり違っていた。
 現在の木府などは再建と新建築によって、映画撮影所のようになっている。特に漢族文化を強調するあまり、あちこちを資料を無視して、漢族風建物に作っている。

 さて第4回、阿雄将軍の台詞
「土司こそ大活躍 先陣を切って多数の敵を葬りました」
おそらく「 屠りました」であろう。言葉は聞き取れないが、字幕なので「葬りました」が浮いてしまう。訳した人が言葉を間違えたのか、字幕を作った人のミスか。
 ナシ語で阿雄将軍が「葬りました」と言ったとは考えにくい。この翻訳の微妙な差は他にもある。
 ドラマの原文は漢語だが、本来「ナシ語」であるから、ナシ語を漢語に訳した形をとるだろう。そこには多少ナシ族の言葉の習慣が入るかもしれない。それを日本語に訳す。
「土司」という言葉。聞いていると「土司大人」と言っている。土司は漢人が地方に根付いた「司」を言った言葉。対する言葉は任地が転々と変わる「流官」(ウィキによる)。
 目下が「土司」と呼ぶのは違和感がある。「土司大人」なら違和感はない。だがナシ語ではどうか。
 門には「木王府」とある。明がこの文字を許したならば、木王様と呼ばなかったのだろうか。
 また「大明麗江府」という文字が途中で出てくる。大明麗江府が明の正式な名だったのか。

 ナシ族の婚姻は通い婚。すべて女性が取り仕切り、男では借金もできない女性社会。家の出入り口の近くの部屋は、若い女性の部屋なのだ。
 ドラマで町の商人を集めたとき、来たのは男性ばかりで、なんかすっきりしない。男性社会だ。こんな所にも漢族文化の地であったことを強調しているようだ。
 また、正妻と妾の関係など、漢族ならまだしも、ナシ族では信じがたい。
 名目最高権力者は土司だが、事実上は土司夫人が権力者だ。これはこのときの土司夫人が優れた人物だからであって、女性社会だからではないだろう。

 なんて細かいところを取り上げたが、話の展開はスピーディー。飽きさせない。いつも、どうなるのか、どう切り抜けるかと、はらはらのし通し。思わず阿勒邱(あろくきゅう)を応援してしまう。善良で賢いのだが、肝心なときに簡単にだまされる。だまされたふりをする策略と思っていると、だまされただけだった、なんてこともある。
 土司夫婦、その二人の息子夫婦、そのそれそれの息子(土司夫婦の孫、木増・木坤)に阿勒邱が混じる愛憎劇だが、木府の存続を賭けたスケールだ。
 木府は金鉱が主要な産業だが、金鉱を欲しがる山砦の主に、木増は交易権を与え、
「金鉱は枯れるが、交易は永遠につきぬ財源となる」と説く。
 第37回、さらに、木増に漢人(徐弘祖)がさとす。
 金鉱はいつかは必ず枯渇する。永遠に枯れないものとして、文化による繁栄こそ麗江を永遠に支える。
 そして木増の時代に、麗江は最も繁栄をした。
 土司夫妻とその幼い子供が、庶民と一緒に四方街で踊る姿は感動する。

♪ 伝説中有一片浄土  それは遙か昔の物語
  住着古老的民族   楽園に住む人々がいた
  毎箇人都能歌善舞  歌と踊りをこよなく愛し
  他們従来孤独    仲良く暮らしていた
  オーアイヨー アイヨー アイエー 

参考 雲南憧憬 9 麗江
   天龍八部の旅13 麗江古城
posted by たくせん(謫仙) at 17:51| Comment(0) | 武侠世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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