麒麟の才子、風雲起こす
評判の琅琊榜をやっと見た。
金庸以外の武侠の特徴である架空王朝だが、モデルは南北朝時代の南朝だ。国号は梁、都は金陵。金陵は南京市の古名である。史実では梁の時代は“建康”であった。
まず、梁国の赤焔軍七万が味方の手で殲滅される。
赤焔軍の将は林燮(しょう)で、この息子の林殊がこの物語の主人公。
12年後、林殊は病弱の身の変わり果てた姿で、復讐ないし名誉回復をしようと、変名で金陵に戻って来た。その変名は梅長蘇または蘇哲だ。ここから物語が始まる。
あらすじなど、あちこちで書かれているので、ここでは書かない。
琅琊閣の琅琊榜とは天下の才人や武人などの番付で、これによると梅長蘇は天下第一の麒麟才子。
いったい皇帝にもできないようなこんなリストがなぜできるか。閣主の藺晨(りん しん)の特殊能力か。もちろん大勢の情報員を抱えてはいるが。
皇太子の蕭景宣(しょう けいせん)と第五皇子である誉王・蕭景恒(しょう けいかん)が後継者の地位を争っていて、“麒麟の才子を得た者が天下を得る”との情報を得る。
二人とも、江湖の江左盟の宗主・梅長蘇が“麒麟の才子”と知り、招こうとする。ところが、梅長蘇は“第七皇子靖王”を支持している。
皇帝は、雲南郡主の穆霓凰(ぼく げいおう、林殊の許嫁だった)の武力を削ぎたく、霓凰を嫁に出そうとする。
こんな風に朝廷内部の勢力争いが大きい。
時々思い出話などが絡むが、本筋を助けて邪魔をしない。これはすばらしい。
そして、梅長蘇は事を起こすかなり前から、入念な準備をしている。それがピタリピタリと当たるのだ。まさかあれがこの準備だったのかと驚く。
第二回で、梅長蘇が太皇太后の所へ挨拶に行く。高齢の太皇太后は昨日あった人のことも憶えていないような状態なのに、“小殊”(林殊の愛称)と呼ぶので、穆霓凰が梅長蘇に疑いを持つ。このように自然に流れている。
梁の建国の設定はいつなんだろう。現皇帝は少なくとも三代目。
史実の梁は(502〜557)ほぼ一代で終わった。
おもしろいのは、三人の皇子の出来が、その母の出来具合と比例している事だ。
第五皇子である誉王(母は義母・皇后)などかなりの出来だが、今一歩足りない。それで墓穴を掘ってしまう。特に参謀役の秦般弱が梅長蘇と比べて格落ちなのだ。
話にスピード感があり、夢中になって、なんと2話90分のDVDを5枚借りて一日で見てしまった。全部で27枚54話。
ここまで夢中になって見たのは初めてかもしれない。
ドラマの出来がいい。香港の武侠など足下にも及ばず、おもしろいが矛盾の多い張紀中の金庸物よりはるかに整合性がある。まるで“校閲ガール”がいるようだ。
戦いのシーンも、なぜここで戦わなければならないのか、理由をきちんと説明している。それでいて無駄がない。
出てくる人物が誰が誰だか判らないので、下のリストを時々見ながら書きながら、ドラマを見ている。
林殊 梅長蘇(ばい ちょうそ) 蘇哲
林燮(しょう、林殊の父、故人)
飛流 林殊の護衛(少年)
黎綱(れい こう) 林殊の護衛
十三先生
宮羽
童路 野菜売り連絡係
藺晨(りん しん) 琅琊閣 閣主
蕭選(しょう せん) 皇帝
蕭景宣(けいせん) 皇太子
越貴妃 皇太子の母 罪を得て貴妃から嬪になる。
謝玉(寧国侯) 皇太子の味方の有力者
謝弼(寧国侯の世継ぎ)
莅陽(りよう)長公主 謝玉の妻、景睿の母
卓鼎風(天泉山荘 荘主) 江湖者 謝玉に仕える。
卓青遥 鼎風の息子
蕭景睿(けいえい) 寧国侯府長子(訳あって謝・卓2家の子とされる)
言闕(けつ) 言侯 豫津の父 言皇后の兄
言皇后
言豫津(よしん) 景睿と仲が良い。
蕭景恒(けいかん) 誉王 第五皇子、言皇后の義子
秦般弱(しん はんじゃく) 誉王の参謀役、若い女性でわけあり。
慶国公
蕭景琰(けいえん)靖王 第七皇子
靖王妃
静嬪 靖王の母親、女医 嬪から妃となる。
穆霓凰(ぼく げいおう) 雲南郡主 もと林殊の婚約者。
穆青 雲南王 霓凰の弟
紀王 皇帝の弟
蒙摯(もう し) 禁軍大統領 林殊と親しい。
高湛 常に皇帝のそばにいる宦官。
夏江 懸鏡使(皇帝の密偵役)の長
夏冬 懸鏡使 若い女性、霓凰と親しい。
聶鋒(じょう ほう) 夏冬の夫、林燮の武将だった。
第一皇子 祁王 故人
第三皇子 患っている。
第四皇子 皇太子(第二?かな)
第五皇子 誉王
第六皇子 大志なし。
第七皇子 靖王
第九皇子 幼い。
副題の「麒麟の才子、風雲起こす」は日本語として不安定。
「麒麟才子、風雲起こす」か「麒麟の才子、風雲を起こす」か、どちらかにして欲しい(^_^)。