監修 岡崎由美 徳間書店 1998.4
中国を舞台にした小説を書く作家たちが、武侠小説の魅力を語る。
田中芳樹・井上祐美子・藤水名子・馳星周など
初めて武侠小説を読む人は、根本的な疑問が生じる。
問
「山の中に大勢の男がこもって武術の修行をしているが、この人たちはどうやって生活しているのですか」
答
「それは訊かない約束です」
最初の会談では、金庸作品の特徴を語る。
とにかく山場が次から次とに出てきて休む暇がないとか、
やたらに大風呂敷を広げてまとまらなくなるとか、
活劇部分の面白さを期待したが、ヒロインの個性が際だつとか、
翻訳しようと思ったが、中国文化を理解しないと難しいとか。
例をあげると、
雪山派の長老、「弟子をぼこぼこ殺している」
簡単に反省するが、そこで終わり。冗談じゃない、殺された弟子はどうなるんだ。
「ヒューマニズムが、どこにもない」
「香港映画とも共通するんだけど、けっこうぼろぼろと人が殺される。それを悩まずに愉しめるあたりがおもしろいところ」
「途中で恋人とか殺されているのに最後は笑ってハッピーエンド。違うだろーお前って(笑)」
わたし(謫仙)もときどき思うことがあるのだが、中国ものは「その他大勢」は人間扱いされない。この人たちはまるで家畜なみ。殺されても、あとで間違いが判ったところで名誉回復でハッピーエンド。これ戦後までそうですよね。もうどうしようもない違和感を感じます。
そのあと、各小説の概要。
金庸のインタビュー。この中で、金庸は笑傲江湖の東方不敗を語る。
映画では女優が東方不敗になるが、これは違う。監督は小説の意味を理解していない。テレビや映画は基本的に見ません。
各小説の時代背景と金庸の歴史観。武侠世界の説明など。それから番外だが、 「臘八粥」を召し上がれ も面白い。「侠客行」で侠客島から招待状が来る。その文が、「臘八粥を馳走するのでいらっしゃい」というのだ。そこでこのおかゆを作ってみたという話である。
座頭市と狗雑種(侠客行の主人公)との比較などもある。
逆手に剣を持つのは、日中とも敵意がないことの印なのに、座頭市は逆手に切る。狗雑種も知らない故に…がある。
わたしが気になったのは、侠客が派手に使う金はどこから、という話。これが上に書いたことなんです。