耶律楚材は元の宰相として登場するが、実際は書記官であったことは「神G侠侶の世界」に書いた。
耶律楚材が完顔萍(ワンヤンへい)に仇として狙われていた。耶律斉は何度もそれを防ぐが、決して完顔萍を攻撃しない。斉は完顔萍が好きだったのだ。その技は全真教の技であり非凡。師父は老頑童だった。
のちに、耶律楚材は元の皇后に殺され、耶律斉と燕は中原に逃げてくる。そして襄陽城に入り、斉は郭芙を娶り郭靖の下で働くことになる。娶る前から郭芙には手を焼いていて、困っていたし、その時の様子では、惚れていたとは言いがたい。好意を持っていたという程度か。完顔萍には振られてしまうが、たとえ振られなくても娶ることはなかったのではないか。
ここで思うのは、耶律斉は江湖の人間ではなく、官僚であるということだ。妹と一緒に逃げてきたが、生計のめどは立たない。そこで郭芙を娶り、郭靖の身内のなったというのは穿ちが過ぎるだろうか。「野合(恋愛)は卑し」などという言葉があった時代である。婚礼当日まで相手の顔を知らなかったと言っても不思議ではない。好意を持っていた程度で理由は充分だ。
官僚型の耶律斉にとっては当然のことであり、江湖で生きることは考えられなかったに違いない。後に丐幇の幇主になるが、それまでは郭芙の夫として扱われる。ふたりの間に子どもはいない。
楊過は、徹底的な野生児であり、非官僚の典型である。楊過と耶律斉、小龍女と郭芙はこの世界の両極である。
結婚してようやく世に出る耶律斉と郭芙。再会後この世から消えてしまう楊過と小龍女。ここでも好対照の二組だ。