翻訳 阿部敦子・松田京子・千夜ハルコ・土屋文子
監修 土屋文子
この本は紹介しようか迷った。
おもしろいかと問われれば、おもしろいとはいいかねるのだ。
映画セブンソード(七剣)の原作ともいわれたが、内容は別物。
映画の公開に合わせて、急遽出版したらしく拙速。急造であることが丸見えなのだ。
まずワープロ誤変換が多い。上巻では送りがなの中によけいな文字が入っている。これなど誰が読んでも(校正しても)判る。
下巻では漢字の誤変換である。例をあげると、
「諸手をあげて…」は「両手をあげて」又は「双手をあげて」であろう。
こんな理由でこの小説を評価するのは問題があるが、この点を取りあげないわけにはいくまい。
もう一つ。小説上の問題は視点が定まらないことだ。骨だけを取り出すと、
Aは敵に切りつけた。
Bは敵に切られた。
とあって、はてAとBは味方同士だったっけ、と首をかしげるが、Aの敵とはB、Bの敵とはAなのであった。それならそれで、もう少し違う書き方があろう。
つまり、おもしろいと言いかねるが、そのようなところが改善されて、わかりやすくなれば、おもしろくなる可能性がある。
著者の梁羽生は金庸・古龍とともに新派武侠小説の御三家と言われる。
この本が最初の翻訳である。また、連作が多く、この本も天山シリーズの一作である。
それ故にわたしは無視しにくい。
時代は呉三桂が三藩の乱を起こすころ、ストーリーは判りにくく紹介できない。それでいながらもう一度読む気にはならない。
清軍が中国を席巻し南へ西へ更に侵略をするころ、これに対抗する天山山脈に根拠をもつ天山派の剣士の活躍である。七剣とは七人の剣士の意味。
視点の変わったところでは、はっきり判るようにすればよい。また改行を増やして、話しているのか心の内なのかはっきりさせる等、それだけでわかりやすくなるかも知れない。
そんなわけで、この本の評価は低いが、元小説まで低いとは思えない。 一応、紹介しておきます。