2012年08月20日

西遊記9

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第九十三回
 三蔵たちはさらに一箇月の旅をし、布金禅寺にいたる。
 ここは給孤独(ぎっこどく)長者の故事の土地であった。ならば舎衛(しゃえ)国である。
 もとは給孤独園寺(ぎっこどくおんじ)で祇園(ぎおん)といわれていた。
 ようやくインドらしい名前が出てきた。
 暗くなって月明かりで給孤園(ぎっこおん)の礎石を見つけると、とこからか父母を求める泣き声が聞こえてくる。
 老住持の説明では、1年前から、近くの城のお姫様(公主)を、魔物から守るために閉じこめてある。寺の僧たちは化けものだと説明してある。
 城に入って確認しようとしたが、城には公主がいらっしゃる。どうか明らかにしていただきたい。
 三蔵は承知して、翌朝出発し城に入った。
 城では公主の婿選びが行われた。鞠を投げて受け取った者を婿にする。
(大理の天龍八部城で行われたことなど、何回かこのような話を書いている。インドでもあっただろうか)
 偶然ではなく、公主が意図的に三蔵が受け取るように投げた。
 三蔵たちは王に接待される。

第九十四回
 悟空は、三蔵を婿に仕立て公主の正体を暴こうとする。
 公主が婚礼の当日は、醜いのがいやだから悟空たちを城外に追い払ってくれと願った。
 通行手形に書き込み、悟空たちだけで取経の旅に出るようにして、追い出す。
 悟空は城を出るふりをして、蜜蜂に化けて三蔵のそばにいる。
 いよいよ婚礼の場に向かう。

第九十五回
 公主に会うと妖気が漂っている。悟空はいきなり糾弾した。
 妖精(妖怪ではなく妖精といっている)は着ている物を脱ぎ捨て逃げだした。
 悟空と妖精の一騎打ちだが、妖精も強い。武器は杵そっくり。妖精は天門に逃げたが、天神に遮られ正体を現し、南に逃げ山の中に逃げ込む。天竺国に帰って害するといけないので、悟空は一度三蔵のところに帰った。国王たちに事情を話し、八戒と沙悟浄に三蔵たちを守らせ、また南の山まで行く。
 土地神と山神を呼び、山の名を聞く。山は毛穎山で、山には兎の巣穴が三つあるだけで、化けものはいないという。
 その穴に化けものがいると思い、捜すと妖精が飛び出した。また戦っていると、太陰星君が来る。
 妖精は太陰星君の広寒宮で玄霜仙薬を搗く玉兎であった。捕まえて国王の前で、本性を現させる。
 そして、布金禅寺に公主を迎えに行く。
 その公主も本性は「蟾宮(せんきゅう)に住む素娥(そが)であった(素娥は嫦娥のこと)。
 いつもの如く王の歓待を受けながらも、心ははやる。

第九十六回
 西へ旅立ち春も過ぎて初夏になる。
 銅台府地霊県の城(町)が見えた。斎を求めようとすると、寇員外がもてなしをしているという。そこを訪ねた。
 (員外とは無役の役人であるが、金持ちの意味もある。金持ちが役人の地位を買った。役人は無税になるからだ。しかし、天竺でもそのようなことがあるだろうか(^_^)。)
 寇員外は20年も前から、1万人に斎を施そうと願をたてていた。ちょうど4人に施して1万人であった。ここで半月ほど接待を受けた。そこで無理に旅に出たため寇夫人に悪感情をもたれてしまう。

第九十七回
 出発した次の日に、寇家に賊がはいり、財宝を奪い寇員外を殺してしまう。寇夫人が三蔵たちの仕業だと役所に届け出る。
 三蔵たちは、賊の一行と会い、宝を取り戻し、寇家に届けようと城に向かった。そこで役人に捕まってしまう。
 そして三蔵は一晩牢で苦しむことになる。ただの人が相手では、悟空たちにとって他愛もない。悟空が寇員外の鬼(幽霊)のふりをしたりして、簡単に解決してしまう。
 しかも冥界の地蔵王菩薩に、寇員外の寿命を12年延ばしてもらって生き返らせた。

第九十八回
 霊山が近づくと、玉真観の金頂大仙が迎えに来た。
 玉真観で一晩過ごして、錦の袈裟を着て、霊山の雷音寺に向かう。途中に川があって丸木橋がある。悟空以外は渡れない。もちろん八戒たちも法力を使えば渡れるが、それは求法の旅なので使えない。
 そこは凌雲の渡しであった。そこへ底のない舟が来て、そのふねに乗って対岸に渡る。
 ようやくお釈迦様の下へ着いた。
 釈迦の前に居並ぶ者は、八菩薩・四大金剛・五百羅漢・三千掲諦(ぎゃてい)・十一大曜・十八伽藍などなど。
 釈迦は、法・論・経の三蔵、全てで三十五部、一万五千一百四十四巻あると言う。
 阿難(アナン)と迦葉(カショウ)に接待させ、三蔵の経を選んで与えよという。なんとこのふたりが袖の下を要求した。そんなものを用意しているわけがなく、知らずに無字の経巻を渡された。そして直ちに帰ろうとする。いくら急ぐとはいえ片道14年もかかったのに、釈迦に一度挨拶しただけで、ここで学びもせず、もらった経巻を見もせずに帰るのか。
 燃灯古仏が気がつき、白雄尊者に、その経巻を奪い取りあらためて有字の真経を取りに来させるように命じた。
 白雄尊者がその経巻を奪うとき、経の包みがやぶれ、三蔵一行はこれが白紙であったと気づく。
 もう一度釈迦のところに行き、事情を話し、あらためて五千四十八巻の経をもらった。
 さて観世音菩薩は、今までの日数が5048日で8日足りない。八大金剛に8日間で三蔵たちを唐土に送り届けるように命じた。

 それにしても阿難(アナン)と迦葉(カショウ)が袖の下を要求するとは(^。^)。
大迦葉=マハーカッサパは2代目ともいわれる。3代目がアーナンダ。
阿難=アーナンダは釈迦の従者、マハーカッサパの弟子ともいわれる。経典の常套句、「如是我聞」の我とはこの阿難=アーナンダである。

第九十九回
 観音菩薩が、三蔵を守ってきた者たちに、今までの苦難を数え上げさせると、80回(数え方で何回にもなりそう)になった。九九(81)の数こそ真に帰すが、まだ一難が足りない。
 そこで八大金剛に一難を加えさせる。通天河まで来たとき一行を振り落とす。
通天河は第四十七〜九回に出てきている。
 そのときの亀の背に乗って河を渡ろうとしたが、三蔵が亀との約束を守らなかったため(亀のことを釈迦に訊かなかった)、水中に振り落とされてしまう。びしょ濡れになって対岸にたどりついた。さらに一晩中大風が吹いた。これは魔物の仕業。
 陳家の世話になり、あのおりのお礼に接待責めに会うが、夜のうちに抜け出す。
 すると八大金剛が待っていて、風に乗って唐土に向かった。

第百回
(最終回)
 長安では太宗皇帝が長安城外に貞観十六年に望経楼をたて、経を受け取ろうと毎年行幸していた。
 この時も望経楼に来ていたので、三蔵たちはそこで復命した。
 そして長安城に戻り、そこで細かく説明した。経の数は5048巻、距離は十万八千里、など。東閣で謝恩の宴を開くことになる。
 この年貞観二十七年であった。出発したのは貞観十三年である。14年の旅であった。
 ただし史実では貞観は二十三年で終わっている。

 本物の玄奘が取経の旅に出たのは貞観三年で、しかも許されず、密出国して出かけた。帰ってきたのは貞観十九年である。

 三蔵は皇帝に、経を広めるために複本を作ることを願い、その後、一行は八大金剛と共に西天に帰る。如来に新たに任命された。
三蔵は、栴檀功徳仏。
孫悟空は、闘戦勝仏。
猪八戒は、浄壇使者。
沙悟浄は、金身羅漢。
白馬は、八部天龍馬。

   十方三世一切仏 諸尊菩薩摩訶薩 摩訶般若波羅蜜。

   …………………………

 この話は中国の話なので仕方ないとはいえ、天竺も中国と同じ政治体制なのがおかしい。員外などいる訳がない。また一般の人に漢字が判る訳がない。(言葉が通じるのは仕方ないか。それを言ったら物語が成り立たない)
 阿難(アナン=アーナンダ)と迦葉(カショウ)が袖の下を要求するなど噴飯物。仏教を全く理解していない。そのような財産を捨てて出家したのに。阿難(アナン)と迦葉(カショウ)が財産を捨ててから何百年たったか。袖の下が欲しいならとっくに還俗している(史実の人物とこの物語の同名の人物は別だと承知しているが)。物語成立時の中国仏教の様子を反映しているのだろう。
 最後に三蔵と悟空は仏に任命されるが、仏とか羅漢などは任命されてなるものではない。このあたり、仏教が企業の一つとなった、後世の中国世界を反映している。
 インドでは出家とは家を出た人であり、全ての財産・権力・身分など捨てた人である。もちろん仏の身分などたとえあったとしても捨てている。そういう人を仏という。仏とは自称でもなく任命された身分でもない。
 当時の(今でも)インドは出家者を尊び食物を与える(喜捨)習慣があり、出家しても乞食(こつじきと読む、こじきではない)で生きていくことができた。中国ではそのような習慣はないので、企業にならざるをえない。これは日本でも同じ。

 途中でいつも思うが、洞窟の暗闇の世界でどうして花園があったり、果樹園があったりするのだ。どうして妖怪の配下たちは見えるのだ。どうして手紙を読んだり、飾ったりできるのだ、などというツッコミを何度も入れようとしていたが、毎回なので入れても仕方ない感じで入れ損ねた。
 それから、実際にやっていることと、悟空たちの力のアンバランス。如意棒の重さは一万三千五百斤(七千トンくらいか)。そんな棒で洞窟の扉を叩いたら、一度で破れそうなものだが破れない。八戒が打ち破ったりする。こういうことは笑って読み進める。
 肝腎の玄奘三蔵の人格が変わってしまって、ただの気弱な使者になってしまっている。物語の設定が変わってしまったようで、違和感がつきまとった。だから天竺でも全く修行をしない。経の確認もしない。これで経の意味が判るのか。翻訳ができるのか。
 それでいながら、妖怪がわんさか出てきても、おかしいとは思わない。それは最初からの設定どおりであるからだ。

          完
posted by たくせん(謫仙) at 07:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 武侠世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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