観音は善財童子を連れて帰り、悟空たちは西への旅を続ける。
進むこと一個月あまりで川に至った。水は黒く、川幅は十里ほど。そこへ小さな舟が来る。この舟にまず三蔵と八戒が乗る。船頭が興した風で舟はひっくり返り、沈んでしまう。
沙悟浄が水に潜ってみると四阿(あずまや)がある。門には衡陽峪黒水河神府とあり、化けものが坊主の肉を食う話をしている。
沙悟浄は門をガンガン叩き、師匠と八戒を帰せと叫ぶ。
いつものパターンだが、上から水の底に降りたのだから、何も門外に降りなくてもよいのに(^。^)。
沙悟浄は化けものと戦うが埒があかない。引き揚げる。悟空と沙悟浄が話をしていると、黒水河の河神が現れて、妖怪に奪い取られた話をする。妖怪は西海竜王の親戚と判る。
西海竜王のところへ行く。竜王の妹の九番目のせがれであった。妹の亭主つまり化けものの父は、第十回で唐の魏徴に斬られた竜王。
西海竜王の軍が化けものを取り押さえる。
黒水河の河神が水を止め、三蔵たちは河を歩いて渡った。
第四十四回
またも春になった。城(まち)が近づくと、千万もの軍がときの声をあげているような声が聞こえる。
悟空が見に行くと、全真教の道士が僧侶を奴隷のように働かせている。悟空は道士に化けて近づく。
車遅国で王をはじめほとんどが全真教の教徒で、全真教なら托鉢は簡単だという。
二十年前、旱になったとき、三人の仙人が救った。虎力大仙・鹿力大仙・羊力大仙でその道士の師匠である。僧侶は雨乞いで役に立たなかったので、こうして使っている。
僧たちは言う。はじめは二千人もいたが今で五百人しかいない。自殺しようとしても神に助けられてしまう。間もなく悟空が来るのでそれまで辛抱せよ、と。
悟空は僧たちを城外に逃がし、三蔵のところへ戻る。一行は城内の勅建智淵寺に入る。智淵寺の僧も飢え死に寸前になっていた。
三清観では道士が星祭りをしていた。夜になると悟空たち三人は三清(元始天尊・霊宝道君・太上老君)に化けて、お供え物を食い尽くしてしまう。すぐに帰らずおしゃべりをしていて、見つかってしまう。
前にも書いたが、全真教は唐代にはなかった。
第四十五回
悟空たちはまた三清に化けると、三人の仙人などが探したが見つからない。祷りはじめたので、聖水を与えると称して、器に小便をしてそれを飲ませる。騒動になるが智淵寺に逃げてしまう。
国王の前で道士と悟空たちが言い争いになる。近頃雨がないので、雨乞いの競争をすることになる。
竜王などに知り合いの多い悟空は、そちらに手をまわして、雨乞いに勝つ。
第四十六回
道士は判定に屁理屈を付けて自分の勝ちだと言い、さらに座禅勝負を言いだす。もちろん三蔵が勝つ。国王はふぬけでまだ道士の言葉に意志がふらふら。
またも道士の言葉で、さらに透視比べをすることになる。
さらに術比べで、三人の道士は絶命することになる。
第四十七回
王が悲しんでいるで、悟空は三道士の正体を教える。虎力大仙は虎、鹿力大仙は鹿、羊力大仙は羚羊。これからは僧侶も大事にするように諭して出発した。
夏が過ぎ秋になる。八月に入ったところ。河に道を阻まれた。石碑があり川幅は八百里を超える通天河であることが判る。近くに村がある。
ここでは毎年男女の子供を妖怪霊感大王に捧げることになっていた。悟空と八戒が子供に化けて身代わりになる。
第四十八回
悟空と八戒は妖怪を退ける。村の人は喜ぶが、このままでは来年も繰り返されることになろう。
急に寒くなってきた。妖怪は雪を降らせ河を凍らせて、上を人が通るように見せかけ、三蔵たちが氷の上を通るように細工する。
三蔵たちは出発する。村人は川向こうは西梁女人国という。あとで判るが川向こうではない。
妖怪は途中で氷を割り三蔵を捕まえてしまう。悟空は飛び上がって逃れた。八戒と沙悟浄は沈んだもののなんとか泳いで逃げてきた。
悟空たちは一度村に戻り、妖怪を退治して三蔵を救うことにする。
第四十九回
水の中を百里も行くと、楼閣があり「うみがめの第(やしき)」とある。門の外も水がない。
いつもの如く、悟空が門から入って様子を探る。三蔵は石の箱に閉じこめられていた。
八戒が門を叩き、妖怪をおびき出すことになった。これは失敗し妖怪は逃げてしまった。門を閉ざし出てこない。
また繰り返すが、水中の屋敷なら何も門の外に降りて外から呼ばなくても…、門の中にに降りれば済むこと。
またもや観音に助けてもらう。妖怪は蓮花池の金魚だった。このときの観音の姿が村人に写され、「魚籃(ぎょらん)観音」と伝わる。
そこに本来の水神である「うみがめ」が来て、一行を渡すことになる。
第五十回
厳冬の季節となった。行く手に高い山がある。寒さをこらえて山道を行くと、楼閣が見えた。三蔵はそこに行こうという。しかも腹ぺこ。
悟空は楼閣は偽物と思い、丸く結界をつくりそこから出ないように言って、斎をもらいに出かける。
ところが八戒がデタラメを言い、三蔵たちは楼閣に行ってしまう。無人の楼閣にチョッキがあったので、それを着ると捕縛されてしまう。
悟空が帰ってくると一行がいない。あたりを見渡すと、あったはずの楼閣が見当たらない。馬蹄のあとをたどることになる。途中で老人がいて聞くことができた。
ここは金トウ(山+兜)山で金トウ洞があり独角兕(どっかくじ)大王が住んでいる。
老人と童僕はこの山の山神と土地神だった。
悟空と独角兕の戦いになるが、独角兕一党はかなり強く、まっ白い輪を持っていて、それで悟空は如意棒を取られて逃げだすことになる。
第五十一回
悟空は、独角兕は天界から下った者と思い、玉帝のところに行って調べてもらう。ところが下った者はいない。
また、托塔李(たくとうり)天王とその第三子の哪吒(なた)三太子のふたり、それに雷公ふたりに助けてもらい、独角兕に挑むが、哪吒の武器が全部取られてしまう。
またもや天界に行き、火徳星君の助けをもとめ、火の力で攻めようとするが、火徳星君一党の武器は全て取られてしまう。また天界に行き、水徳星君の水の力と思うが、水は洞内には入らず、流れ出てしまう。また悟空が、にこ毛を分身にするが、これも全部捕らえられてしまう。
仕方なく、悟空は蝿に化けて洞内に入り、如意棒を取り戻す。
第五十二回
悟空に如意棒を取り戻されたと知り、独角兕は悟空を追いかけて山の上に来る。悟空と独角兕の戦いになるが勝負はつかず夜になった。独角兕は洞窟に引きあげる。悟空はコオロギに化けて、洞内に忍び込む。
独角兕は寝るときも、あのまっ白い輪を腕に嵌めている。
悟空のにこ毛が見つかり小猿にして洞内に火をつけさせ、また取られた武器を小猿に持たせ外へ出る。大勢の独角兕の子分たちが焼け死んでいた。
翌朝、悟空やその助力者たち一同と独角兕の戦いになるが、またもや一同の武器を取られて元の木阿弥となる。
悟空は、天界では無理と思い、西の如来に独角兕の正体を尋ねると、教えてくれず代わりに十八羅漢をよこす。それでも独角兕には歯が立たない。如来の言付けに「その場合は太上老君を尋ねよ」という。
独角兕は太上老君の牛であった。白い輪は金剛琢である。
太上老君が団扇で一扇ぎすると妖怪(独角兕)は青牛になった。太上老君は金剛琢を鼻輪にし、太上老君は牛の背に乗り、帰って行く。
洞窟から武器を取り戻し、助力者たちも帰って行く。
第五十三回
早春の候となる。
第四十八回で、河の向こうは西梁女人国と言ったが、それから半年近く旅をしたことになる。
きれいな小川に至る。小川と言うが相当広い。女船頭の舟で渡るのだが、のどが渇いていたので、三蔵と八戒は川の水を飲んでしまう。すぐに腹が痛くなる。
なんと懐妊してしまった。川の名前は子母河という。しかももうじき赤ん坊が生まれるという。
ここは西梁女人国。南の解陽山破児洞の落胎泉の水を飲めば、おろすことができるという。そこまで三千里。ちかごろ、如意真仙に占領されている。そんな遠くの事情をよく知っていること。村人が必要になったとき取りに行けたのか(^_^)。
もちろん悟空はひとっ飛びで行ける。如意真仙は牛魔王の弟で紅孩児(第四十回に出た)の叔父になる。紅孩児のことで怒っていて戦いになる。悟空は一度引き返し、沙悟浄を伴って来て再度戦う。戦っているうちに沙悟浄が水を汲む。
第五十四回
それから四五十里で西梁女人国の国境に至る。そして城に入る。してみると前回は西梁女人国ではなかったのか。男がいないことは同じなので、西梁女人国の支配する周辺の村なのだろう。
城では男が来たと大騒ぎ。女王は三蔵を婿にし王位を譲る計画を立てる。悟空たちだけを通し、取経の旅を続けさせる予定。
悟空も手荒なことをせず、三蔵を婿に仕立てて、計略で通り抜けようとする。通り抜けようとしたとき、三蔵は女妖怪に掠われてしまう。
第五十五回
悟空たちは三蔵を探していると、毒敵山琵琶洞を見つける。女怪の目的は三蔵を情人とすること。口説いても承知しないので、ぐるぐる巻きに縛りあげ、廊下に引きずりだした。
悟空たちは女怪と戦うも埒があかない。そこへ魚籃観音がきて、女怪は蠍の化けものと教える。また天界東天門の昴日星官(ぼうじつせいかん)に助力を願えと。
この件は解決し西へ旅を続ける。