2006年07月10日

蘭嶼10 あとがき、核廃棄物

01年7月1日 記
この太平の島にも核の陰が忍び寄っていた。
 島の南部に軍事基地(?)があった。ところが、そこはいつの間にか、核廃棄物の貯蔵庫に変じていた。新聞報道によれば、住民には全く説明がなかったという。台湾の原子力政策のマイナス部分を引き受けさせられた、といえる。
 生活の近代化・高度化には必ずマイナスの部分があるが、そのしわ寄せは、台湾では高山族にいきがちだ。もはや反対運動をしても、覆すことは不可能に近い。
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 ヤミ族のような台湾原住民を、台湾では高山族という。日本では高砂族といわれるが、現在では、一応言わないことになっている。高砂族と言うのは失礼、高山族と言うのが正しい。
 だが、高山族と高砂族は同じではない。日本統治時代に、いわゆる原住民を高砂族といった。その中で漢族に溶け込んで、独自の文化を保てなくなった民族を平埔族とよび、いつまでも独自の文化を保っている民族を高山族とよんだ。だから海の民のヤミ族も高山族という。清朝時代は、熟蛮・生蛮といわれていたという。
 現在、平埔族は完全に漢族に溶け込んで消滅し、高山族だけが残った。故に理論的には高砂族でも間違いではないが、台湾の人々がそうよぶことを望むなら、高山族とよぶべきである。ただし、高山族の人々が、それを希望しているかどうか。また、中国では少数民族として、高山族と分類しているが、各部族は言語も由来も異なり、同一民族とするのは無理がある。
 言語は北京語といわれる中国語が国語であり、学校では国語で学ぶ。蘭嶼では、日本語が中心の老人世代と、日本語の判らない若者では、言葉が通じないこともあるようだ。
    …………………………
02年12月18日 追記
 12月18日の朝日新聞に「小さな島の直接民主制」として台湾・蘭嶼の記事が載っていた。
 放射性廃棄物移転求め
 台湾の南の離島、蘭嶼で民族議会を作る動きが始まった。海洋先住民、ヤミ族の島には原発の放射性廃棄物の貯蔵庫があり、島民はその移転を求めてきた。小さな島の直接民主制は未来の「自治政府」を見据えている。

     中略
(最後に、放射性廃棄物の貯蔵庫問題について解決のめどはたっていないとして)
 島民を本島に移住させる構想を示したが、「我々を滅亡させようというものだ。蘭嶼は我々の先祖が最初に見つけた島で、誰もその土地を侵すことはできない」(ジナイド郷長)と、反発を招いただけだった。
     中略
 島民の不安は消えない。
 この「原発の放射性廃棄物の貯蔵庫」については上にに述べた。それから20年近くたって未だ解決しておらず、まあ、解決するはずもないが、わたしにとって、たんなるニュースではない。
 台湾の最南端にウォーランピー岬がある。そこは有名な観光地であるが、その目の前に原子力発電所がある。
 現在の世界状況では、原発ナシで電力を賄うのは容易ではない。日本も他人事ではない。今年公開された数々の原発事故を思えば、46平方キロしかない小島の住民が、不安に思うことは納得できよう。
 なお人口は三千人とある。この20年間、ほとんど増えていない。(注98年の統計では四千人くらい)
     …………………………
06年6月21日 追記
 6月20日の朝日新聞に蘭嶼の記事があった。
 記者は永持裕紀。その中の一部、わたしの蘭嶼の記事に関連する話を。
 (タオ族とはヤミ族のこと、近年名が変わった)
 蘭嶼は人口約3500人で大多数がタオ族。フィリピン北部の民族に近いとされ、トビウオや芋類を食べる自給自足の暮らしを、数百年間営んできた。
  中略
 貨幣経済が浸透したのはつい40年ほど前のことだったという。
 このころから縦穴に隠れた住居からセメントで固めた住居に変わった。わたしが行ったころはもうセメントの家が中心で、縦穴の家は少なかった。
 それはともかく、放射能廃棄物の貯蔵庫が現在もまだ未解決だという。
 台湾本島の3カ所の原発で使われた金属や布など、低レベル放射性廃棄物の貯蔵場が82年からあるのだ。
 コンクリートで固められた廃棄物はドラム缶に詰められ、地下3メートルに貯蔵される。その上は分厚いコンクリートで覆われているが、運び込まれたドラム缶は約9万8000本に達する。

   中略
 90年代以降、島では撤去運動が盛り上がった。「『缶詰工場をつくる』とだまして孤島に押しつけた」という怒りが島民にあったからだ。台湾電力は搬入をやめ、「02年までの移転」を約束。だが移転先候補とされた台湾内の他地域でも反対運動が起こり、行き場を失ったやっかいなゴミは、ここに居座ったままになっている。
   中略
 約束が守られなかったことへの補償金が03年、支払われた。1人に6万3000台湾ドル(約22万円)。現金収入のある人の年収に近い額だった。
 だが心境は複雑だ。「一挙にカネが入ってきて、なんだか島の空気がおかしくなった」

 以下、「子供たちが、20台湾ドル(約70円)のジャムトーストなどを買いに来る」とか「気になるのは泥酔者の増加」とか、わたしが島に行ったころにはありえなかった状況になっている。
 最大ホテル「蘭嶼別館」によれば、9月までの4カ月間の宿泊客は昨年6000人。今年は1割増を見込む。でも放射性廃棄物を残したまま観光地作りが可能かどうか、だれにも分からない。

 朝日の記事です。
http://www.asahi.com/international/weekly-asia/TKY200606200210.html
posted by たくせん(謫仙) at 06:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 蘭嶼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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