製作は１９８３年の香港版。杜琪峰（ジョニー・トウ）監督。
往年のビッグスター黄日華（フェリックス・ウォン）版である。
香港の俳優は英語名があり、わたしには憶えられないが、中国名でなんとか判る俳優の一人だ。黄日華はこの射鵰英雄伝で一躍名をなした。
ヒロイン黄蓉役の翁美玲（バーバラ・ヨン）は１９８５年に自殺したため、この射鵰はさらに有名になっている。「雕」ではなく「鵰」なのも原作と同じ。
この射鵰は名作と言われ、前に紹介した李亜鵬版（黄蓉役は周迅）の射雕英雄伝も黄日華版には敵わないといわれている。
わたしは李亜鵬版の 射雕英雄伝 を先に見ているので、李亜鵬版も悪くないと思っているが、黄日華版をみて比べてみることにしよう。逆に李亜鵬版に思い入れがあって、批判してしまうかな。おそらく中国人とは違った評価をすると思う。
鉄血丹心 １～１９ 二枚組
東邪西毒 １～２０ 二枚組
華山論剣 １～２０ 二枚組
という分け方になっている。これに気が付かず、いきなり目に入った１～１０の数字を見て見始めた。ところがすでに郭靖と黄蓉の二人が一緒。しばらくして全部のＤＶＤの文字を見て、順序が間違っていたことに気づいた。
あらためて、鉄血丹心の１から見始める。
まず、最初に思ったことは、黄日華と翁美玲がとても１７歳と１５歳には見えないこと。華山論剣の時だから、２０歳と１８歳かな。それならなんとか。
女性のスタイルが皆同じようだ。それと老人二人、洪七公と周伯通が似ている。
郭靖の母親李萍がどこかのお嬢様のようで、鶏や豚などを平気で捌くような農民的な逞しさがない。これでよくモンゴルの荒野を一人で生きていけたもの。そして立派な位牌を持っている。文字が読めず夫郭嘯天のフルネームさえ知らないはず。それはともかく位牌が立派すぎる。注文品だ。砂漠の真ん中に作る人がいたか。李亜鵬版では粗末な板に手書きの文字だったので、なんとか納得した。
実は大変な問題があった。字幕がないのだ。普通は普通話の字幕が入る。それがないと台詞の意味が判らない(^｡^)。ストーリーは知っているし、演技でなんと言っているか、推察できるにしても、全く判らないのは辛い。
郭靖の少年時代になると、ゴビ砂漠地帯の戦いになる。それが香港の地形と植生では、まるでイメージが違う。そして背景には海があったりする。このあたりが香港版の限界か。
ジェベが蒙古軍から逃げる。
郭靖が射た鷹を探している。
殺陣はいつもの如く、１、２、３、４。１、２、３、４。と声を合わせて動く体操の如し。もちろん１２３ではなく、エッ、オッ、ハッ、ホッというようなかけ声だ。これは香港版の特徴。乱闘シーンでも全員が同時に声を出す(^｡^)。
１で半数が打ち込み半数が受ける。そして一休み。そして２で逆になりまた一休み。
まあ約束事の世界だ。京劇では馬の鞭を持って歩いていると、馬に乗っている意味になる。旗を背負って将軍が戦うと大軍が戦っている意味になる。旗の大きさや数によって軍隊の大きさが決まる。香港版の武芸はそのようなものかと。
完顔洪烈はこちらの方がいい。張紀中版（李亜鵬版）の完顔洪烈は登場したときから初老の面差し。美人に恋をする年齢ではない。孫の五六人もいるような年齢なので違和感があった。
梅超風はこちらの方が原作に近いか。梅超風が近くにいる場所で、柯鎮悪の葬式を出して、それで梅超風を騙そうとする。郭靖はもう少年ではないときで、それは設定の変更だからかまわない。
問題は、その墓穴を掘るのがまるで力が入っていなく、穴を掘る現実感が全くない。場所も道の真ん中のような、草木がなく、土も硬いところ。そんなところを墓にするのかよ。それでもその土地を熟知している梅超風が騙される（はずがないぞ）。
この梅超風が居るところが、蒙古パオの目と鼻の先。パオも谷のようなところに五六張り。あまりにスケールが小さ過ぎる。香港では仕方ないか。
コジン姫の心の動きと郭靖との関わりは良くできている。李亜鵬版には見られないものだ。逆に郭靖の成長の様子がいまひとつ。
第９集で、江南に向かって出発する。この時は徒歩だ。あの赤馬（汗血馬）はいない。
いよいよ黄蓉と出会う。黄蓉は全くの乞食少年。ただしとても１５歳には見えない(^_^)。
１０集で舟のシーンがある。舳先は乗り場を向いたままで、舟はまるで動かず、郭靖が艪を動かすがまるで力が入っていない。艪は空中にあるようだ。そもそも砂漠育ちの郭靖が艪の扱い方を知っているのか。
その後の黄蓉の水中格闘シーンは迫力がある。俳優が泳げるという意味だ。
