2009年09月30日

天龍八部の旅16 昆明

 雲南の旅も最終回。
 昆明に帰って、友誼商店に入る。
 友誼商店によらないツアーは許可しない、という政策はもう止めるべきだと思う。もっとも今では、政策はなくなったが、事実上続いているのかも知れない。
「お客さんを連れてきたが商売にならなかったよ」ということが続けばなくなるだろう。
 大学の教授だという墨絵画家が、八卦拳を披露し、皆の目の前で絵を描く。
 わたしと八雲さんが絵を見ていると、しきりに自分の描いた絵を勧める。石林の絵だ。 絵は確かにうまいが、そこまでしなければ売れないようなレベルではないかと思う。床の間に飾るにはいいが、財産にはならないことは知っておくべき。
 大学教授だというのも気に入らない。日本の国立大学なら懲戒解雇か。解説だけにして、売るのは店の人に任せるべき。だから大学教授というのは偽であろうと思っていた。数回講師に招かれた程度ではないかと。本物の大学教授のアルバイトかもしれない。中国の大学のシステムはどうなっているのか。
 わたしたちは自分で写真を撮ってきている。わたしは必要なら写真を紙焼きして飾る。
 細かい買い物はした人がいるが、大きな買物をした人はいないようだ。
  
 石の碁石もあった。上下共に丸みのある日本や韓国の碁石だ。中国の碁石は片面が丸みがない。値段は聞かなかった。わたしがもし買うなら蛤だ(日本ではハマグリが高級品)。だが今は不要。持っているガラスの碁石も出番がなくなっている。

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 左 軽かったので硬玉ではなさそう。 右 この碁笥は雲松書舎でも見た。

 買って後悔することがある。買わずに後悔することもある。どちらのリスクを取るか。わたしは中国なら買わずに後悔する方をとる。それで今まで買わずに後悔した記憶はない。
 ホテルに帰ってから、ガイドの案内で歩いて近くの新華書店に行くことになった。ほとんどの人が希望した。

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 途中のマンション。窓側は総格子である。あちこちで見かける。
 書店といっても主な目的は武侠DVD。ところが見事に外れた。武侠ものはほとんどなかった。
 買った物は、傾城の恋(現代物、原作・張愛鈴)・皇城神鷹・風雲決(アニメ)。本は一冊もない。
 帰る時間になった。出口の集合場所に行くと、中国語簡体字の解説書(?)を買った人がいて(ソラさんだったか)、それを広げて岡崎先生とガイドを中心に話をしている。ひとしきりしてからわたしも岡崎先生に聞いた。李清照の解説書を書いた人の名に「余」の字の縦棒が上に突き出ていない字(下の部分が「示」)があったのですが。
「それはジャと読みます。ジャジジュジェジョのジャ。人の名前以外には使わない字なんですよ」
 日本に帰ってからATOKで探すと、「じゃ」で出てくる。早く漢和辞典で調べればよかった。当時(1990年ころ)は持っていなかったので、余の異体字かと思っていたのだ。
 わたしのホームには「余雪曼」として紹介してあるが、余とは別な字であった。
 近いうちに書き改めねばならない。
 ホテルに帰って夕食である。ホテルのレストランに集合するころ、外は豪雨となっていた。
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 アヒル料理はおなじみになった。
 写真はないが「過橋米綫」も出た。雲南を代表する有名な料理である。米を粉にして、麺にしたもの。丼麺の表面に薄く鶏の油を張ると、冷めにくくなる。質素な料理のはずだ。しかしこれに具を加えれば、かなり豪華になる。
 雲南の民家の軒先に唐辛子があることから判るように、雲南の料理は辛い。そのままでは日本人には食べられないので、今まで食べた全ての料理は日本人向きに作ってある。

 ここで話したというわけではないが、岡崎先生に伺った話。
「わたしの手元に翻訳された原稿が届いたとき、老頑童の台詞は関西弁になっていたんです。それがすごくおもしろかったので、そのまま使いました」
 老頑童以外に阿碧が阿朱と話すとき関西弁を喋る。それで蘇州なまりを現している。それでは東北なまりは郭靖か。なんて話で盛り上がる。
 これを全てやったら大変だ。雲南なまり・西夏なまり・女真なまり・蒙古なまりなどなど。老頑童と阿碧にとどめたのは賢明。
 このブログに、間もなく天龍八部の年表を載せるが、それには元豊6年5月に喬峯が幇主となり、物語が進み、哲宗が親政する年まで、三年のずれが生じる。
「勝手に訂正するわけにはいかないし、その他にも承知でずらしたところもあり、そのまま本にすることにしました。金庸さんはそういうところがありますね」
これは歴史小説ではないので許される。
「ルービックキューブのプロは凄い、五つも並べて目隠しをしたまま、あっという間に解いてしまう」
謫仙「わたしに言わせれば、岡崎さんの中国語もそうですよ」
 岡崎先生は「いえいえ」と謙遜するが、わたしがそう感じるのは岡崎さんの日本語能力からだ。翻訳の微妙な表現とか、日本語にない言葉をどう表現するかとか、適度に固い言葉も混じらせるとか。わたしが金庸小説にはまったのは、この日本語による。

 夕食後、雨も止んだので有志による市内散策。と言っても近くのスーパーに行く。
 ここで駄菓子をいくつかを買った。
 たとえば「雲南十八怪」。雲南十八怪という言葉があり、その言葉を菓子名にした物。
 雲南十八怪には定説はないようだ。他地方とは違う習慣など十八。
 わたしたち武侠迷は、「江南七怪」という言葉を知っているので、言葉の衝撃はない。誰のことと思ってしまう人もいないとは限らない。
 その菓子は大きなひと箱の中に、小さな箱が三十くらいあったか、それぞれ中身は違う。五箱ほど食べてみたが、残りは捨ててしまった。
 他の菓子も同じような運命をたどった。
 武侠スターが宣伝に出ている。聖姑(役)と梅超風(役)が駄菓子で、小龍女・王語嫣(役)が化粧品というのは……ナンです。(^_^)。

 五日目、帰国の日だ。朝食後出発し、7時5分にはもう空港にいる。7時10分チェックイン。45分には搭乗。広州に向かう。
 持ってきた文庫本グイン128など2冊は読んでしまったし、帰りの飛行機の中では、ずっと詰碁の本を見ていた。隣では岡崎先生が数独をやっている。
 詰碁の本ならエンドレスだ。解く楽しみより、かけ算の九九のように形を覚えることが主眼だからだ。
 写真集を作成しようという話があり、再会を約して解散。超過密の旅を終えた。

  空冷えて玉龍雪山風白し 思い出せない旅の数々   謫仙
 
posted by たくせん(謫仙) at 07:09| Comment(8) | TrackBack(0) | 雲南憧憬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最終回、執筆お疲れ様でした!

>友誼商店によらないツアーは許可しない、という政策はもう止めるべきだと思う。
そんな政策がある(あった?)んですね!
知りませんでした。

岡崎先生の日本語能力とかセンスは本当に素晴らしいですね。
恩恵にあずかる事が出来、感謝です!

また是非次の旅行でもご一緒させて下さい!
Posted by 阿吉 at 2009年09月30日 18:26
友誼商店については以前こんなことがありました。
ある友誼商店で一回り見学して、わたしたちの何人かが外に出ようとしたところ、添乗員に「もう10分ほど待ってて下さい。あまり早く出て行くと、次回のツアーが取りにくくなりますので。済みませんが」と言われ、もう一杯お茶を飲んでから出たことがあります。
別なツアーでは、「友誼商店には毎日1回よらないといけないンですよ」とも言われました。
岡崎先生と行く中国の旅は場所が場所ですから、友誼商店がないような土地が多いので…(^_^)。

岡崎先生の日本語能力、外国語教授はその外国語が堪能だけではなく、そのセンスは自国語にも活かされていますね。だから外国語が堪能になるとも考えられます。
それを時代劇らしい雰囲気をもったまま現代語に訳す。
師妹、また機会がありましたらご一緒しましょう。
Posted by 謫仙 at 2009年10月01日 06:46
旅行記、楽しく読み終わらせていただきました。
あのしょうもない・・・ととと
・・・地味な友誼商店にはそういう理由があったんですか。

売ってるものは高いは古いは、色は変わってる、カビは生えてるw
かえって連れいていく方が、国益を損ないそうな気がしますがw

岡崎先生の翻訳はほんとすてきですよね。
なんかす〜〜っと物語世界に入っていけるんです。
あの長い金庸作品を一気読みしちゃったのは、
金庸先生の物語世界の素晴らしさだけではないですよね。

今度の雲南旅行は、ほんとに素敵な旅行になりました。
いろいろあったトラブル(たいてい自分がまきおこしたんですがw)も
楽しい思い出です

機会がありましたら、またぜひご一緒させてください。
Posted by 迷子 at 2009年10月01日 23:25
友誼商店の存在は、昔は不可欠だったようです。
休憩所を兼ねてトイレの問題も解決してくれました。商品の品質も一般に比べて高かったので、値段は特別高いけど、安心して買えるし。
でも、今では普通の土産物屋でも買えますから。石林のようにきれいなトイレが整えば、友誼商店による意味がなくなりそう。
雲南に行くような人は、すでに何回か中国に行っている人でしょう。昆明でめぼしいものは少ないでしょうね。
今回の武侠ツアーでは、わたしたちの見たいところとガイドの見せたいところが、どこか微妙にずれている気がしました(^_^)。
八部城は一般のツアーでは行かないし、たとえば、四大悪人の手配書で立ち止まるとは予想外だったのでは(^。^))。ほとんどの人が本屋に行きたがるのも珍しいし。
わたしには崖崩れも今では貴重な思い出。おかげであぜ道を歩いてイナゴに出会えました。

わたしもあの長い金庸作品を、読み出すと止まらなくなってしまいました。図書館の本は全部読んで、それからの新刊は全部買いました。だから全作品の半分は装丁本を持っています。
今になって、初期の本を古本屋を探し歩いていますが、これはありませんね(^。^))。
文庫で我慢するか。

岡崎さんは、次回は少林寺を候補に上げていましたが、どうなりますか。再来年くらいかな。またご一緒致しましょう。
Posted by 謫仙 at 2009年10月02日 07:51
日本の格安ツアーも買い物ばかりですね。
買うものがないから良いと言っていても、
中国の通訳は直ぐ買い物に連れて行きたがりましたっけ・・・

何も買ったことがないのですが・・・
買わないと不服そうでした。

素敵なお仲間との楽しい旅のようでしたね。
いつも、一人旅の仕事の海外の私から見るとそれは素敵なことです。
Posted by オコジョ at 2009年10月02日 16:59
オコジョさん
武侠ファンというのはマイナーですし、こういうツアーがあることも知らない人が多いしで、数少ない人が集まったというツアーなので、初対面でも「お噂はかねがね…」という人たちばかりでした。
今回は時間も過密で、買い物している暇もない状況でした。昆明だけ時間がとれたというところです。

仕事の旅ですと、なかなか見学している時間はないと思います。
割高といっても密度は濃いし、気心の知れた人との楽しい旅でした。
また機会があれば行きたいと思っています。
Posted by 謫仙 at 2009年10月02日 19:40
旅行記お疲れ様でした。
楽しく読ませていただきました。
本屋の前で岡崎先生に色々質問していた
中国語の本は、実は黒田さんに借りていた本です。
黒田さんが買ってすぐに借り、まるで自分の物のように
持っていました(^^;
21世紀旅行さんに来年も岡崎先生企画を
お願いメールしておきました。
そしたら数日後返事が来て

貴重なご意見ありがとうございます!温かいお言葉、本当に嬉しい限りです。
実は私自身も来年もできればいいな〜とこっそり思っておりました///岡崎先生は
大変お忙しいご様子なので確約はできませんが、弊社としましても、毎年続けられ
るよう精一杯努力したいと存じます
と返事がきました。

次回もよろしくお願いします。
Posted by ソラ at 2009年10月04日 01:05
ソラさん
あの本はそんな事情でしたか(^_^)。
わたしは中国語学習からは手を引いて、今は碁に集中しています。
わずかに覚えている中国語でも、全く知らないのとは違って、少しは役に立ちますね。
次回、ソラさんは「一年おきにして欲しい」と言っていたようですが、それをあらためて翌年となれば、21世紀さんも企画しやすい、「ソラさんのために企画しよう」となりそう(^。^))。
わたしも、来年かも知れないならそのつもりで予定しておきます。
来年もありますように。
Posted by 謫仙 at 2009年10月04日 07:22
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