2021.6.4 一部訂正追加
侠客行で、玄鉄令とならぶもうひとつの謎が賞善罰悪使の能力。
十年ごとに来る侠客島よりの招待。間もなく四回目の招待が近い。招待されるのは武林各派の総帥。招待の使者は、張三李四の二人、賞善罰悪使という。
狗雑種は鉄叉会と飛魚幇の全滅の様子を見ている。
狗雑種は張三李四と義兄弟になったあとで、石清に説明される。(第二巻P222〜)
「三十年前、武林中で大きな門派幇会の頭が、突然、相次いで招待状を受け取った。十二月八日、南海の侠客島で朧八粥の宴においで頂きたいとな」
銅牌と招待状をもたらしたのは二人の少年だった。張三李四ではないかと思われるが断定していない。招きに応じない者は直ちに殺されてしまった。そのような事件があちこちで起こった。
一年の間に、彼らの手にかかった者は十四人、宴に赴いたのが三十七人。
十年後(つまり二十年前)、わずか十日あまりで拒んだ門派を三つ、幇会を二つあわせて数百人を皆殺しにしてのけた。銅牌をばらまき続け、拒否した者は、必ずその魔手に倒れた。結局侠客島へ渡ったのは四十八人。
さらに十年後、力を合わせて武林の害を取り除こうと、一人も逆らわず五十三人が侠客島に渡った。しかし侠客島に渡った者は帰ってこない。
ここまではあくまでも石清の説明による。
全てが張三李四の二人でやったとは言いきれないが、その他の使者がいたとも思えない。そしてこれは説明であり、地の文ではない。
第三巻P36で張三李四が登場すると、
人相風体は三十年来、武林の心胆を寒からしめた善悪二使そのもの。一様に背筋が凍り…
この二人にそっくりな人相風体の別な善悪二使がいたとは考えにくい。
P183では、史婆婆が幇の頭を譲れとせまると、そばで聞いていた、侠客島の迎えが、
「長楽幇の頭は二十過ぎの若者、ご高齢にして徳高き女性ではないと賞善罰悪二使はたしかに申しておりましたが」
と、建前は賞善罰悪使はふたり。
一同侠客島に行くと、広間に入る。龍島主と木島主を紹介され、それに弟子たちも二列に別れて入ってきた。
P193
銅牌を配って回った賞善罰悪使者もその中に入っていた。黄の衣の張三は右の十一番目、青い衣の李四が左の十三番目、かれらの後にさらに二十人あまりが続く。人々は冷水を浴びた心地がした。張三と李四の腕前は、皆が目の当たりにしているが、他にも多くの同門がいるとは意外だった。おそらく腕も似たり寄ったりだろう。
(……、他の連中はさておき、善悪二使だけを相手にしても、二十手と立ち会える者はいくらもおるまい)
と、皆が賞善罰悪使者は張三と李四の二人だと思っている。
P209
二島主は、賞善罰悪簿を皆に見せて、
「我らは手下を使わして、江湖の消息を集めておるが、…。…滅ぼした門派幇会は、いずれも許し難い悪行三昧の輩。…」
そして証拠書類も見せる。
頁を繰るうちに「可殺」の朱筆の文字が五六十カ所あり、張三李四の筆と知る。
と、これらを「可殺」と記録したのは張三李四である。本文の記録者は不明。疑問がないところを見ると皆が張三李四と思っているか。
石清の説明とこの四例が賞善罰悪使の説明のほとんど。
結論として、賞善罰悪使は張三と李四の二人だけ。「手下を使わして」の文字をどう解釈するか。わたしは今まで張三と李四の二人と思っていたが、それ以外に表に出ない多くの人がいたと解釈すべきか。話の様子では侠客島の従者はここにいる人がほとんどらしい。
それ以外に各地に散らばり探偵をしている人がいないとは断定できないが、いる気配はない。
ただし、調査係がいないと、不可能だけに、どこかに匂わさなければいけないと思う。
>いないとは断定できないが、いると断定する記述もない。
賞善罰悪使は招待役であって、調査する係ではない
と考えられます。
なぜなら、毒酒の飲み比べの時点で「狗雑種」が長楽幇幇主
になっていることは知らなかったからです。
それから、狗雑種は、上清観に行きますが、既に銅牌が渡されています。このことから、張三と李四は狗雑種と同じ道のりを歩いていると考えられます(恐らく狗雑種の正体を探るため尾行していたのでしょう)
それから、石清閔柔と共に数日旅をして、狗雑種は丁とうと共に
夫妻と別方向に行き、鎮江の長楽幇本部に向かいます。
そして、張三と李四は本物の石破天を揚州で捕まえて屋根に隠しています。
毒酒の飲み比べから時間的に考えて、他に調査係がいなければ長楽幇の陰謀をこれだけ短時間に暴くことは不可能です。
侠客島への送迎係は張三と李四でなく、各招待人ごとに複数いることから、調査係が他にいてもおかしくありません。
>毒酒の飲み比べから時間的に考えて、他に調査係がいなければ長楽幇の陰謀をこれだけ短時間に暴くことは不可能です。
そうですよね。それでなければとても無理。だが一度も出てこないので、困っていました。
送迎係は数がかぎられる。二使は各地で顔を見せているので二人。問題は有能な調査係が大勢必要なこと。島の能力でこれができたか。
そこで、玄鉄令と同じで武林の噂だけが大げさになっているだけで、実体はそれほどでもないか、あるいは調査係の説明を忘れてしまったか。
わたしの疑問は、「調査係が必要なのにそれが出てこないし、島の人数ではむりではないか」というもの。
まあ、調査能力の特別な技を持った人が大勢いた、と考えるしかありませんね。