2008年10月17日

ドラマ雪山飛狐 その5

 飛狐外伝の地図、易家湾の北側あたりに苗人鳳が住んでいた。ドラマでは北京の近く。この設定の変更によってあちこちで齟齬が生じる。
   hikogaidenchizu.jpg 

第十三集
 ここは興味深い。胡斐は北京に向かう途中で、苗人鳳に会うこともなく、もちろん程霊素に会うこともなく北京に着いた。
 ここで蘭の手紙を苗人鳳に届けることになった。
「鳳陽の苗家荘」から40里(20キロくらいか)の「胡楊鎮」まで来て、苗若蘭に会う。「胡楊鎮」も創作っぽい。どこにあるのだろう。雪の残る町である。
 若蘭は十一歳なんだが、けっこう役者。嘘泣きがうまい(^_^)。射G英雄伝の黄蓉を思わせる。一晩だけの家出をしていて、胡斐に取り入る。
 苗人鳳の家で官軍と戦いになる。胡斐は北京から馬で飛ばして来て、寄り道は二日ほど、しかし官軍が先回りしていた。苗人鳳が毒で盲目になるのは小説通り。
 この第十三集あたりから、ほとんどドラマオリジナル。
 苗人鳳の目を治し、掌門人大会があり、玉筆山荘の話があり、七年後胡斐と苗人鳳の戦いがある。が、これらの話は原作にあるから仕方なく入れたという程度の扱い。もともと、この話で40集は無理だったか。半分の20集でよかったかな。

   …………………………
第十四集
 戦いの後、苗荘は焼け落ち、使用人はほとんど死に、苗人鳳は行方不明。苗人鳳の行方も判らないのに、胡斐と若蘭は洞庭湖畔の白馬寺まで毒消しを探しに行くことになる。片道直線距離でも千二百キロを越える旅。しかもこの旅には若蘭を伴っていた。無理があるなあ。(何も言っていないが、北京から薬王谷まで一ヶ月くらいかかるのかな。往復二ヶ月か)
 村人も集まっていたので、先に盲目の苗人鳳を捜すのが先だろう。裏山で今でも戦っているのかも知れないのに。

 若蘭は十一歳。つまり商家堡から七年後の設定になる。そうなると胡斐は二十一歳か。小説では四年後、胡斐十八歳だ。
 なお南蘭は自分の手紙に毒が仕込まれたことを知り、田帰農の心を知って首をつる。
 このあたり、酔った田帰農は迫力がある。何も言わずとも、目を見ただけで酔っているのが判る。俳優の演技力に驚嘆した。この俳優は何か言われたとき、一呼吸置いてから表情を作ることが多い。たとえば「好、好、好a」と言って、「そうか、かまわん、それは素晴らしい」と言うような日本語訳で、沈んだ顔、意を決した顔、あとの謀略を思いついたお世辞の笑顔、を使い分ける。このお世辞の顔が真顔でも笑顔でも迫力がある。
 南蘭は小説では外伝の最後にも登場するので、こんな死に方はしない。

 白馬寺薬王谷でのあれこれは、登場人物が違ったものの似たような話。
 谷の近くの街から同行した鐘三兄弟はあっけなく死んでしまうが、小説では同行するのは鐘兆文だけで、しかも死なない。この三兄弟は十数年前、南蘭たちの一行を襲い、南蘭の父親を殺した過去があるのだが、このドラマでは無関係のようだ。
 薬王谷では姉弟子が敵役になるが、兄弟子がふたりいたはず。ドラマでは無視か。
 程霊素の住まいは、見かけは乞食小屋だが、中は都会風。外の灯りはまるで商店のよう。薬売りで生計を立てているのかな。
 家の前は花畑なのだが、別画像の合成。あの有名なCG画像か。足首を隠す程度の草花の中を人が通っても一切揺れない。動きがあまりに嘘っぽい。こんな時こそ、得意の造化を使えば良いのに。
 そこへ胡斐が毒に当てられた若蘭を連れて行く。
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 こんな洒落た内装の家。毒の心配もせず食事をしている。この料理は毒消しを含んでいる。
 なお、女優の箸の持ち方は中国でも問題がありそう。

   …………………………

第十五集
 若蘭の毒消しには大量の発汗が必要だったが、程霊素はそのことを黙って若蘭にいろいろ仕事を命ずる。重労働もある。それを根に持ったのか、若蘭はことあるごとに程霊素に逆らう。程霊素は適当にいなしているが、若蘭と程霊素の恋の鞘当てが始まっていた。程霊素と姉弟子薛鵲(せつじゃく)との確執は小説のまま。薛鵲は毒手薬王の一番弟子だが、小説では三番弟子。
 ここに登場する女たちは、ほとんどが現代ファッション雑誌から抜け出たような服装。時代考証はしていない。
 制作者は「どうせ本当の服装は判らないから」というが、それでは偽装だ。武侠はSFだが、時代背景に乾隆帝の時代を使うなら、それに合わせなければならない。架空の国架空の時代ならかまわない。
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程霊素 こんな服装の人が乾隆帝の時代にいたか。

   …………………………

第十六集
 帰路もいろいろと邪魔が入る。
 苗荘は焼け落ちたままだった。若蘭は、東にある風鈴とその下の三つの石から、東風谷三石荘に父がいると解く。そこに向かうが、途中の程霊素と若蘭のやりとりが面白い。たとえば、若蘭が程霊素の靴を流してしまう。ところが靴には毒が塗ってあって、若蘭の手は赤く腫れてかゆくて仕方ない。それでも意地を張って謝らない。これから父の目の治療をしてもらおうという相手にそんなことをして、うまくいかずふくれている。
十一歳で女の戦いをしています(^_^)。

 程霊素は苗人鳳の治療に当たる。
 飛狐外伝では、苗人鳳は洞庭湖の南に住んでいて、そこで盲目になり、暗殺団との戦いがある。父娘ふたりっきりの生活なので、さほど大きい家とは思えない。雪山飛狐では北方寧古塔にいる。このドラマでは長白山の北方のようだが、関外では話が合わない。北京の近くと考えるべき。
posted by たくせん(謫仙) at 07:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 雪山飛狐・飛狐外伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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