(一部「書庫−雪山飛狐」と重複します)
明末、李自成が反乱し明朝を倒した。翌年(1645)李自成死去。
その時、胡・苗・范・田という四人の護衛がいた。実は胡斐の先祖が偽の死体を作り、清に差し出し、李自成は密かに逃げた。このため胡家はそのことを知らない他の三家に恨まれる。胡家ではそれは秘密とし、百年経ったら他の三家に話してもよいと伝わった。
それから約百年がたった。
その子孫である胡一刀と苗人鳳は話し合いをしようとするが、田帰農に騙され決裂し、戦いの末胡一刀は死ぬ。胡一刀の妻は生まれたばかりの子を苗人鳳に託し自決。しかし子は田帰農に狙われ、宿の下働きの少年平阿四が助け出すが行方不明になる。子は死んだと思われていた。
二十七年後、関外の長白山に武林の英雄女侠が集まった。目的は田帰農が持っていた宝の箱の奪い合い。そこに割ってはいる僧がいて、近くの玉筆山荘に誘われる。
そこで下りるすべを失った江湖の英雄たちの、回想による胡一刀の死の謎解きである。
映画「羅生門」に似たプロットだが、その途中から、いつもの如く武術の争いになる。
最初は君子然としていた、江湖の英雄やお嬢様が、少しずつメッキが剥がれていき、氷に閉ざされた宝の山に到ると、宝の山に群がるごろつきに変じていく。
最後に胡斐と苗人鳳は戦うことになる。
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1644 李自成、北京を占領。明朝滅ぶ。李自成の天下は四十日。清軍に追われる。
1645 李自成死去。実は胡の策で逃げることかできた。
1736 乾隆初年
1750 外伝では、胡斐はこのころ生まれる。(外伝と本書では差がある)
1751 外伝では、このころ胡一刀死去。ただし胡斐の生まれと同じ年と思われる。(外伝と本書では差がある)
1753 胡斐はこのころ生まれる。数日後、胡一刀死去。烏蘭山玉筆峰(長白山の一部かその近く)の玉筆山荘に江湖の英雄が集まる27年前。
1780★乾隆45年3月。烏蘭山玉筆峰の玉筆山荘に集う。胡斐は二十七歳。
1795 乾隆帝退位。
1799 乾隆帝死去。
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登場人物
胡斐 :(こひ)雪山飛狐といわれる侠客、胡一刀のひとり息子。父の死の真相を探る。
胡一刀 :故人、胡斐の父。
苗人鳳 :金面仏といわれ、打遍天下無敵手といわれる稀代の侠客。決闘で誤って胡一刀を殺してしまう。
平阿四 :胡斐の育ての親。片腕。
苗若蘭 :苗人鳳の娘。
琴児 :苗若蘭の侍女。
田帰農 :前の天龍門北宗の掌門。自室で不審な死をとげる。先祖は李自成の護衛。
田青文 :田帰農の娘。
曹雲奇 :天龍門北宗の掌門。田帰農のあとを継ぐ。
周雲陽 :曹雲奇の弟弟子。
阮士中 :田帰農の弟弟子。天龍門北宗一の凄腕。
殷吉 :天龍門南宗の掌門。
陶百歳 :老齢ながら鉄鞭の使い手。盗賊の頭。
陶子安 :陶百歳の息子。田青文の婚約者。
馬塞主 :飲馬川の塞主。
范幇主 :丐幇(乞食の組織)の幇主、龍爪檎拿手の使い手。先祖は李自成の護衛。
熊元献 :(ゆうげんけん)北京平通鏢局の総統目。盗賊から運送荷物を守る運送業・護衛業者。
鄭三娘 :双刀の使い手。夫を飲馬川との戦いで失った。
劉元鶴 :乾隆帝の御前侍衛。
賽総官 :劉元鶴の上官。狼牙棒の使い手。
宝樹 :老僧。本名閻基。武術の達人。元は田舎医者で胡斐の誕生に立ち会う。胡家の武芸書の最初の二枚を得て覚え、盗賊団の頭領となる。
杜希孟 :玉筆山荘の主。老侠客。杜希孟の娘が胡斐の母。
于差配 :玉筆山荘の差配で実直な男。
李自成 :明朝を倒したが、臣の統率ができず、40日で清に倒される。
胡・苗・范・田:李自成の護衛。