2008年09月09日

飛狐外伝の世界

   金庸   訳 阿部敦子   徳間書店   01.30
 清朝の乾隆帝の時代。
 書剣恩仇録で、カスリーが死んで、紅花会が紫禁城を騒がしたときから、六年くらいたったころ。山東武定の商家堡で物語が始まる。そこで胡斐(こひ)が登場し、一波乱あって胡斐が大きく成長するきっかけとなる。
 四年後、広東仏山鎮で鳳天南一族の悪事から農民を守ろうとする。農民は殺され、鳳天南には逃げられてしまう。それから北京に行き、福府(福康安の邸宅)での武林掌門人大会の大乱闘まで。
 カスリー(香妃)が死んで十年後である。この時、胡斐は十八歳。
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 明末、李自成が反乱し明朝を倒したが、その時、胡・苗・范・田という四人の護衛がいた。翌年(1645)李自成死去。実は胡斐の先祖が偽の死体を作り、清に差し出し、李自成は密かに逃げた。このため胡斐一族はそのことを知らない他の三家に恨まれる。李自成は鹿鼎記で再登場する。
 それから約百年がたった。その子孫である胡一刀と苗人鳳は話し合いをするが決裂し、戦いの末胡一刀は死ぬ。その胡一刀の息子胡斐の成長物語である。胡一刀が死んで、二十七年後、胡斐と苗人鳳は戦うことになるが、これは「飛狐外伝」のつづき「雪山飛狐」の話になる。
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 以下☆印は推定。★は基準になる年。年齢は満年齢。金庸小説は満年齢を使っている。

1644 李自成、北京を占領。明朝滅ぶ。李自成の天下は四十日。清軍に追われる。
1645 李自成死去。胡斐の先祖が偽の死体を作り、清に差し出し、李自成は密かに逃げた。このため胡斐一族はそのことを知らない他の三家に恨まれる。
1662 康煕初年、康煕帝九歳。
1673 康煕十二年、三藩の乱が起こる。
1723 雍正初年。
1736 乾隆初年。
1745 李自成死後百年。(史実基準)

  (四捨五入と言うわけではないが、1年のずれは仕方ない)
1750☆ 胡斐はこのころ生まれる。(仏山鎮で18歳なら、この年の生まれ)
1751☆ 山東・武定鎮の雨宿りの十三年前。胡一刀死去(胡斐の生まれはこのときのはず)。
1753  乾隆十八年、書剣恩仇録の始まり。
1758★ 書剣恩仇録の舞台が江南に移る。乾隆帝が六和塔に閉じこめられたりする。この年、カスリー(香香公主)が自決する。
1761☆ 山東・武定鎮の雨宿りの三年前。南蘭の父が持っていた宝刀が鐘兆文・鐘兆英・鐘兆能という鄂北鬼見愁鐘家の三兄弟たちに狙われた。父は死んだが、南蘭は苗人鳳に守られ夫婦になる。
1764★ カスリーの死から六年後。山東・武定鎮の雨宿りで物語が始まる。胡一刀の子胡斐はまだこども、14歳か。(13歳では仏山鎮で18歳にはならない)
 苗人鳳は3年前に「10年前に誤って胡一刀を死なせた」という。つまり13年前。(となれば13歳)
1768★ カスリーの死から十年後。また苗人鳳が南蘭を助けてから八年後(計算が合わない、七年後か)。逞しくなった胡斐が広東の仏山鎮で活躍。まもなく易家湾で鄂北鬼見愁鐘家の三兄弟との戦いがある。この時十八年前に生まれたという。

1778☆ 胡斐と苗人鳳が戦う。
1780 乾隆45年。「雪山飛狐」ではこの年に胡斐と苗人鳳が戦う。
1795 乾隆帝退位。
1799 乾隆帝死去。
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   登場人物
胡斐  :(こひ)少年侠客、胡一刀のひとり息子。
平阿四 :胡斐の育ての親。片腕。
胡一刀 :故人、胡斐の父。
趙半山 :紅花会三番差配。千手如来といわれる。書剣恩仇録に登場する。
心硯  :紅花会当主陳家洛の従者。軽功の達人。
円性(袁紫衣):紫の衣を着た少女。母は鳳天南に暴行され妊娠した。そして円性を出産し、鳳天南に追われて逃げ、湯沛の下女となるが、湯沛に暴行され自決した。袁紫衣(仮名)は尼僧に助けられ、赤子のとき出家し円性となる。
陳家洛 :反清の紅花会当主。乾隆帝の弟。福康安(乾隆帝の息子)に似ている。
無塵道人・常かく志・常伯志・駱冰:紅花会の実力者。
カスリー:(香香公主)故人。ウィグル族の少女。

苗人鳳 :金面仏といわれ、打遍天下無敵手といわれる稀代の侠客。決闘で誤って胡一刀を殺してしまう。
南蘭  :苗人鳳の妻。田帰農に一目惚れし駆け落ちする。
苗若蘭 :苗人鳳と南蘭の娘。

田帰農 :南蘭と駆け落ちする。そのころは苗人鳳に睨まれて小さくなっていた。しかし、実体は天龍門北宗の掌門。実力者。
閻基  :胡家の武芸書のはじめの二枚だけで、かなりの力のある盗賊となる。

馬行空 :飛馬鏢(ひょう)局の鏢頭。百勝神拳といわれる。
馬春花 :馬行空の娘、徐錚と婚約するが、次の日には福康安の情婦になる。福康安の子を産む。
徐錚  :(じょそう)馬行空の弟子。馬春花の婚約者になる。後に馬春花と結婚し、飛馬鏢局の鏢頭になるが、腕が平凡なため、いい仕事がなく苦労する。仕事の途中で死ぬはめになる。

商剣鳴 :故人、商家堡の主人だった。
商宝震 :商剣鳴の息子。仇討ちを目標にしている。仇討ちの相手は胡一刀と苗人鳳。
商夫人 :商剣鳴の妻。商家堡の主人。凄腕。仇討ちを目標に商宝震を鍛える。
福康安 :乾隆帝の私生児。乾隆帝には重用されている。書剣恩仇録に登場する。武林掌門人大会を開き、江湖の抹殺を図る。
王維揚 :故人、商剣鳴の師父。
王剣英・王剣傑 :王維揚の息子、八卦門の使い手。
何思豪 :御前侍衛。

鐘兆文・鐘兆英・鐘兆能 :鄂北鬼見愁鐘家の使い手。三兄弟。
鳳天南 :広東・仏山鎮の実力者。五虎門の掌門。
鳳一鳴 :鳳天南の息子。
鐘阿四・鐘阿嫂 :仏山鎮の農民夫婦。鳳天南の暴力の犠牲者。
万鶴声 :故人。楓葉荘の主人で少林寺韋陀門の掌門。
劉鶴真 :少林寺韋陀門の凄腕、万鶴声とともに韋陀双鶴といわれた。

無嗔和尚:故人、毒手薬王といわれる。
程霊素 :毒手薬王の末弟子。学んだのはほとんど人を助ける薬の智慧。兄弟子たちは毒のことしか興味がないので、少女ながら毒手薬王に薬王神篇を託される。愛する胡斐の身代わりに死ぬことになる。
慕容景岳:毒手薬王の一番弟子。
姜鉄山 :毒手薬王の二番弟子。
薛鵲  :(せつじゃく)毒手薬王の三番弟子、姜鉄山の妻だが。
姜小鉄 :姜鉄山と薛鵲の息子。
石万嗔 :(せきまんしん)毒手薬王の兄弟子。

秦耐之 :開封府八極門の掌門。
周鉄鷦 :(しゅうてっしょう)鷹爪雁行門の一番弟子。
曾鉄鴎 :鷹爪雁行門の二番弟子。
汪鉄鶚 :(おうてつがく)鷹爪雁行門の弟子。
姫暁峯 :華拳門の使い手。
蔡威  :華拳門の長老、胡斐たちを裏切り馬春花の子を福康安のところに連れて行ってしまう。
大智禅師:少林派掌門、九十歳を越えて見える。
無青子 :武当派掌門、書剣恩仇録の陸菲青。
湯沛  :(とうはい)三才拳掌門。円性の母を暴行した。円性の母は自殺してしまう。
海蘭弼 :黒龍門掌門、満州人。
posted by たくせん(謫仙) at 06:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 雪山飛狐・飛狐外伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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